上映されていた映画は、もう終盤へと差し掛かっていた。 途中の話を見てないせいで、訳の分からない展開になっている。 けれど恋愛のドラマの終盤といえば、お決まりのクライマックス。 愛しい人へと想いを伝える告白シーンへと突入していた。
(・・・・・・。)
恋愛ドラマは映画でもテレビでも、あまり得意ではない俺。 脚本家や演出家、出演している俳優の演技力が素晴らしければ素晴らしいほど心に残る作品となる。 今見ている映画だって途中の話が分からず把握出来てないというのにも関わらず。この告白シーンは、こんなにもこの心を揺らしてきた。 まるでこれが正しい恋愛の仕方なのだと、言われているみたいで。 じゃあ俺は何なのかと、問いただしたくなる。 まるで自分を否定されているように聞こえてしまうのだ。 恋愛ドラマの台詞が綺麗な言葉であるほど、自分が歪んで穢れてしまったように思えた。 ・・・本当にその通りなのだから。 その重みは酷く心に響き残った。
「ー・・帰る。」
上映が終わり、暗くなった館内に照明が戻り少しずつ明るくなってきた途端。 俺は席を立ち、隣にいた及川にそう伝える。
「え?どうしたの浬くん?この後、一緒にご飯食べ行こうよ。」
「いや、やめておく。ー・・ごめん、せっかく誘ってくれたのに。」
「ううん。てかそれ僕の台詞だから。それより本当に大丈夫?具合悪くしたのなら無理しなくていいからね、浬くん。僕も今日楽しかったから。」
「ありがとう。そう言ってくれて。・・・それじゃあまた学校で。」
「うん。お大事に、浬くん。」
どうしたことだろう。 そこから逃げるかのように。 映画館から出た俺は、そのまま自宅へと帰って行ったのだった。
つづく
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