明人先輩に相談した1番最初の日。 俺がグラウンドに10周走りに行く前に彼は言っていた。
『そうそう、それとね鳴くん。好きな人に好きだと言うのは、とても勇気がいることなんだよ。』
『好き』というのは、色んな意味があって、色んな種類があって、頭だけじゃなくて自分の全部で感じるとてもシンプルな感情。 でもそれを愛として想い人に告げば、それが最後だと齎すとてもコンプレックスな言葉だと。
『同性が相手なら尚更。自分の好きが自分の好きな人を傷付ける可能性のが大きすぎるから。』
『一緒に自分は『ホモです』『レズです』とカミングアウトするわけだから、ですか?』
『簡単に言えばそうだね。その結果を悪く言えば、そんなこと言われても困るし引くし、距離を置きたくなるのが普通でしょ?』
『まあ悪くというか一般的に言えばそうですね。実際に俺、今、困ってますし。』
『だからって自分の好きよりも好きな人を大事にして。言えば壊れるからって、今を必死に保つ臆病な人がいるんだよ。僕はそれでも自分の好きに正直になるべきだと思うんだけどね。』
だからこそ差出人が俺に出した手紙の意味を、真剣に考えて欲しいと伝えられていた。
『・・・なんか随分と詳しそうですね?その話。』
『僕の身近にもいるから、かな。なんとなく鳴くんに話しておきたかっただけだよ。色んな人がいるから色々あって当然なんだけど。中にはそういう人もいること、知っていてほしかったから。』
そう明人先輩に言われていたから、俺はラブレター出した差出人にちゃんと返事をしようと考えた。 すっぽかしてしまっていたとしても、すれ違っていたとしても。 それが出された側の礼儀だと思って。 でも鬼頭の目撃証言により、それは友人2人が揃って俺を騙すことが目的だった。 こっちは真剣だっただけあって、それは計り知れないほどのショックを受け、裏切られた気持ちに心が染まる。 そしてその日のうちに同じ内容で同じ差出人から再び手紙を送られ、2度目となれば押さえつけれなかった怒りをぶつける。 けどそいつは、手紙にも書いてあったとおりのことを。
「・・・鳴。今日はもう、エイプリルフールじゃないよ。」
自分の想いを告げたのだ。
「ずっと鳴が好きでした。」
近くにいる俺を遠い目で見つめて。 弱々しく震えた声で彼は最後に、
「・・・ごめんなさい。」
と。言い残して、目の前から去ってってしまう。
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