現行犯じゃないけれど目撃者がいたことにより、ようやく差出人を。いや、犯人を捕らえる為に2人の元へこっちから近づく。
「お、どうした?鳴。野球部に来るなんて珍しいじゃん。」
先に気付いたのは陸哉。 相変わらずケラケラと、俺を見て笑っていた。
「・・・・・・。」
空は背を向けたまま。 俺の名を陸哉から耳にした途端、肩をビクッとさせたが、こっちを見る気ないようだ。
「どうしたー?そんな怖い顔して。」
「・・・・・・・・・。」
「ははぁ〜ん。やっと気付いたってとこ?この4月バカ。」
「うっせーよ!」
俺はその間も、この気持ちを、この感情を。爆発しないよう出来る限り押さえつけていた。 そのせいで強張った顔色だったが、それを見て察した陸哉。けどそれでも変わらずの態度のままで怒りのパラメーターがグングン上昇。
「マジで気付いてなくて逆にオレらが焦ったじゃん。鈴木先輩巻き込んでてさ。普通、読んだら気付くでしょ?ご丁寧に『四月一日(わたぬき)』って平仮名で書いててやったのに。」
「悪かったな・・・。気付かなくて、気付いてなくて。」
4月1日はエイプリルフール。 その日だけ嘘をついても許される日。 そんなこと俺だって分かる。 けど。けど、さ。 いくらなんでもやっていい悪戯とやっちゃダメな悪戯ってあるじゃん。 あのラブレターが悪戯だっただなんて、やられた側は本当たまったもんじゃないんだぞ・・・。
「ちなみにオレは『わたぬき』と『♂』の部分だけな。あとは空が書いた力作。」
「ちょ!陸哉・・・っ!」
「いいじゃん、もう。鳴にバレたんだから全部バラしたって。どう?4月1日にラブレター読んだご感想は?」
陸哉も空も、エイプリルフールを利用して俺をからかうのが目的だったのだろう。 それを友達にやられて。 信じていた親友にやられて。 数日に及んで弄ばれた俺の心は信じられない気持ちで。裏切られた色に染まっていき、今までのモノが全部底へ堕ちていく感覚がした。
「最低だな、お前ら。」
明人先輩が言ってたアレも手段じゃなくて、助言だったんだ。 なかったことにした方がいいって。 さっさと忘れた方がいいって、言ってたもんな。 でも、もうそれ無理。 知って分かってしまった以上、もう無理。
「鳴?お前まさか!」
「やめて陸哉!」
「俺に話かけてくるな。・・・暫く口ききたくない。」
共犯2人が何かを言いかけたが、どうせ下らない言い訳だろう。 俺はバカだから簡単に言いくるめて、平和に終わらせるつもりだったのだろう。 けど今回ばかりは流石に許せられなくて、2人の言い訳聞かずして、この場から立ち去った。
それから演劇部の本日の活動時間を迎え、いつも通り練習に取り組んでいた。 俺の機嫌がどんなに悪かろうが、サボるわけにはいかない。 新入生の部活動歓迎会がもうじきなんだ。 ここで1人抜けるわけにはいかなかった。
|