本田先生が国語の授業中に雑談を交えて、それを口にした。
「『井戸の中の蛙 大海を知らず』という諺をご存知ですか?」
それは知識、見聞が狭いことを例えた諺。 またそれにとらわれて広い世界があることに気づかず、得意になっている人のこと。 小さな井戸の中に住む蛙は、大きな海があることを知らないから批判する意として多く使われる。
「批判的に使われる諺ですが、先生は『それが幸せか幸せじゃないかは、蛙が決めればいいこと』だと思ってます。誰に何を言われても。」
けどそれが蛙にとって幸せならそれでいい。 広い世界を多く知っても、1つの世界に拘っても。 本田先生はその蛙が幸せであることを望んだ。 しかし井戸の底から天を見上げれば、それは光となり、眩しくて時には目を背けていたくなる。 そしてそこから外に出ようと失敗して堕ちた痛さを知れば知るほど、蛙だって負う怖さに怯えても無理はないだろう・・・。
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