赤の境界線 | ナノ

おつかいに行った翌日。わたしはまた鬼灯さんに呼び出されていた。それも食堂に。何故だ。朝から解けることのない疑問が頭の中をぐるぐる回る。向かいに座っている鬼灯さんがようやく口を開いた。

「…今日は、」
「は、はい!」

妙に緊張しているのが伝わったのか眉をひそめられた。それも一瞬のことで、次には彼の言葉にわたしは、びっくりだとか、驚くだとか、そんな感情はなくただただポカンと口を開け間抜け面を晒すしかなかった。

「今日はあなたの有休を使わせてもらいました。ついでに給料日です。どうぞ」

差し出された封筒を受け取ると、確かに中にはお金が入っていた。ありがとうございます。頭を下げて封筒をポケットにしまうと、こほん、と咳払いをした鬼灯さんが続ける。
なので今日は私と天国のデパートにでも行きますか。

「……はい?」

あまりにも突拍子もないことに思わず聞き返すと彼の眉間に皺が寄る。怖い。

「その着物も一張羅でしょう? 折角給料が入ったのですから何か服でも買ってきなさい」
「あ…りがとうございます」

もう一度頭を下げると少しだけ表情が柔らかくなった。
話を聞くと、彼も今日は1日休みでわたしの買い物に付き合ってくれるという。それはとてもありがたいことだ。天国なんてろくに行ったことが無いから迷子になるのが落ちだ。それなら。
話がまとまれば後は早かった。朝食を済ましもう出発。閻魔殿を後にして天国へと向かう。その途中、何度も何度も鬼灯さんは他の鬼に声をかけられたり、かけたりしていた。仕事は休みだというのに周りに気を配って。
わたしも、現世で就職するなら上司はこんな人がいいなと思って、でもこんなにお顔の怖い人だったらどうしようと思って、クスリ、1人で小さく笑った。
天国はその名の通り綺麗で、温かくて、皆幸せそうに笑っていた。前方には商店街が見えてきた。

今度は一緒に
お出かけですね。

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