「黄瀬君ってかっこいいよねぇ」 あぁ、へぇ、そう。 「彼女とかいるの? ……いないんだったらわたしと付き合ってくれない?」 別にいいっスよ。どうせ暇だし。 「ねえ…シよ?」 うんいいよ。どうせこれっきりだし。どうせ、捨てるんだし。 黄瀬君は自分に近寄ってくる女は鬱陶しいと思ってる。寄ってこない女は興味がない。実害が無いから。寄ってくると鬱陶しいけど寄ってこないとなんだかモヤモヤする。 なんで? 俺こんなにかっこいいのに。こんなに美形なのに。 ふと耳に入った女子達の会話。話題は黄瀬君。 「いいなぁ、なまえは黄瀬君と同じクラスで」 「ほんっと羨ましいんだけど」 ほらね、みんな俺のこと好きなんだよだって褒めてくれるし。 「そう? わたし、あの人嫌い」 あれあれあれ? 褒めてくれないの? 俺のこと嫌いなの? あは、そんなわけないっしょ。 男子に嫌われることはあっても女子に嫌われたことが無かった黄瀬君は、その女子に興味を持った。嫌いだときっぱり言われているのに近づいた。バスケをいつも以上に頑張った。全てはあの子のため。 ほら見て俺かっこいいでしょ? バスケこんなに上手いんだよ? こう見えても優しいんだよ? こんなに女子に人気あるんだよ? モデル、やってるんだよ? 「やめてよ、黄瀬君」 なんでなんでぇ? 他の女子はうるさいくらいに、聞いてもいないのに「かっこいいね」とか「バスケ上手いね」とか言ってるのに、どうしてなまえは俺を褒めてくれないのぉ? そうだ付き合ってみたら俺の魅力が分かるっスね! でも付き合うってどうするの? ああ、そうだヤっちゃえばいいんだ。だって付き合ったらヤるんでしょ? じゃあ逆もありだ、ヤったら付き合う。 「黄瀬君やめて」 自分の下で泣き叫ぶ彼女は見ないふり。 不純異性交遊? 違うよだって俺となまえは付き合ってるんだから。大丈夫、でしょ? |