ドルチェ | ナノ

「琥珀ちゃん、お弁当箱の用意を頼めないかしら」
「りょーかいっ」

今日はお花見。それも万事屋メンバーも一緒に!緩む口元を手で隠しわたしはお花見の準備を、お妙ちゃんはお弁当の準備を。そこまで考えて、わたしは顔を引き攣らせた。

「お妙ちゃん! お弁当はわたしが作るよ!」
「あら、もう出来たわよ」
「…」

今日はとってもいい天気。まさにお花見日和だ。桜の花弁が風に揺られて落ちてくる。綺麗。万事屋の皆と集まってのお花見。なんか、フン、フンッっていう息遣いが聞こえる。花見しないのかな。あの人。
場所を取ってお妙ちゃんと銀さんたちを待っているとでかい犬こと定春君にしがみついて三人は到着した。まってました、と言わんばかりの笑顔でお弁当ですよーと中央に置く。

「ワリーな姉弟水入らずのとこ邪魔しちまって」
「いいのよ〜琥珀ちゃんがいるとはいえ三人で花見なんて寂しいもの」

志村お父さんが健在の時は皆でハジけたんだって。お妙ちゃんのハジけた姿……ちょっと怖…何でもないですすみません。
そうこうしているうちにお食べになって、と弁当箱のふたが開けられる。
そこには何時ぞや銀さんが食べ(倒れ)た(真っ黒な)卵焼き。冷や汗様なものが流れる。

「なんですかコレは? アート?」

銀さんが声を絞り出した。そして卵焼きではなく焼けた卵だの可哀そうな卵だの言う。
いいから男はだまって食えや!
卵焼きを鷲掴みしにしたお妙ちゃんは銀さんの口に無理やり押し込む。それを見て恐怖した神楽ちゃんはこれを食べないと死ぬんだ…と暗示をかけてまで食べだした。わたしも逃げてばかりはいられない。銀さんも神楽ちゃんも食べたんだ。

「これは炭じゃない、卵焼きだ、卵焼きだ…」

神楽ちゃん同様暗示をかけ食べる。なんだかシャリシャリした食感。

「暗示かけてまで食わんでいいわ!」
「ガハハハ、全くしょーがない奴等だな。どれ、俺が食べてやるからこのタッパーに入れておきなさい」

極々自然に溶け込んでいた近藤さん。ストーカー被害にあっているお妙ちゃんの反応が怖い。
何レギュラーみたいな顔して座ってんだゴリラァァ!
綺麗な顔を般若のように歪め張り手で近藤さんを突き飛ばし、馬乗りになってフルボッコ。

「オイオイまだあストーカー被害にあってたのか、町奉行に相談した方がいいって。琥珀も気をつけろよ」
「あ、うん。ありがとう」

(…あれ? 銀さんに呼び捨てされた)

これは仲良くなれたと受け取っていいのだろうか。
ストーカーをしている近藤さんは警察。世も末だな、なんて話していると聞き覚えのある低い声がした。

「悪かったな」

そこには土方さん、総悟をはじめとした真選組の面々。隊服ではないが腰には刀がある。どうでもいいけどさ、土方さん胸元はだけ過ぎでしょ。
真っ先に食ってかかったのは銀さんだった。

「オウオウ ムサい連中がぞろぞろと何の用ですか? キノコ狩りですか?」
「そこをどけ。そこは毎年真選組が花見をする際に使う特別席だ」

真選組の特別席なんだ。だったら避けなきゃ駄目かな。広げているお弁当を片付けようと手を伸ばすと銀さんに掴まれた。

「どーゆー言いがかりだ? こんなもんどこでも同じだろーが、みろよ琥珀の悲しそうな顔! チンピラ警察二十四時が」
「宮本っ!?」

チンピラ警察二十四時って…銀さんと考えがシンクロした。銀さんと土方さんも仲が悪い様だ。
土方さんが焦ったようにわたしの顔を覗き込んでくる。大して悲しそうでもない私の表情を見て、ここから見える桜は特別なんだよ、とどうしてもわたしたちが邪魔なようだ。だが、真選組の人たちは場所などどうでもいいらしく酒が飲めればどこでもいいと。アスファルトの上でもいいと。もう、花見関係ないじゃん。

「うるせェェ! ホントは俺もどーでもいーんだがコイツのために場所変更しなきゃならねーのが気にくわねー!」

場所取りに行かせた山崎さんがいない、らしい。ここには誰もいなかった。その山崎さんは総悟がミントンをしているとチクって土方さんは山崎さんに跨りフルボッコ。
……折角のお花見なのになあ、皆で賑やかになんて初めてなのになあ。

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