青林檎の微熱 | ナノ

黒子のコロコロ鉛筆をもらい、リコの家での勉強会は続き、ようやくテストを迎えた。一限目から千夜の苦手な英語があり最初は自力で解こうともがきもしたが、やはり千夜の英語力は小学生が戯言を言うとほぼ同レベルであった。
コロコロ…と五十分間鉛筆の転がる音がずっと聞こえていた。その音を聞き、黒子は自分の上げた鉛筆が役に立っている、千夜が使ってくれているという事が嬉しくてうきうきとした様子でテストに臨んでいる。
一限目が終わり、昼休みを挟むと今度はしっかりとシャーペンを走らせる音が響き、次は火神の方から鉛筆を転がす音が聞こえる。
テストをすべて終えて、千夜はふと横を見てみると机に突っ伏して負のオーラを全開にしていた。まごうごとき火神である。

***

翌日、恐怖のテスト結果が明らかとなった。二年生一同はバスケ部に欠かせない戦力の火神が気になり集団となって一年のクラスに押し寄せた。
単刀直入に言うと、火神の学年順位は九十位。国語の点数は九十八。余りの瞠目に日向のめがねが粉砕。
リコはもう一人心配のある人間を思い出し首をひねった。

「千夜ちゃんは!?」
「あ…」

配られたプリントを手渡す前にリコに持っていかれ、またも感嘆の声を上げる。が、火神の時とは意味が違っていた。

「なんだ千夜ちゃん、勉強したらちゃんとできるじゃないの」
「え、マジで?」
「人名すら読めなかった蓮見が?」

ピラ、とリコに見せられたプリントには英語八十六点、学年順位は七十二位と示されていた。
やればできる、よく頑張った、やっぱお前は頭良いよ、と様々な声をかけられるが、実際、千夜も鉛筆を転がしていただけである。自力で解いた問題は七割間違えていた。

「一体どうやって…!?」
「いや…俺も蓮見も鉛筆転がしてただけ…なんで」
「はあ!?」

不審げに日向は鉛筆を手に取ると黒子が緑間特製コロコロ鉛筆であることを告げる。「緑間こぇぇ!!」と叫ぶとともに鉛筆を投げると床に弾かれ、またも頬を掠める。ツーと血が伝った。
怪我人は出たものの全員補習はまぬがれたから良しとしよう。これでようやく部活に集中できる。

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