青林檎の微熱 | ナノ

リコの家での勉強会を終えた翌日。火神は両の頬を真っ赤に腫らし、目の下にはクマまで作って単語帳をブツブツと読んでいた。不眠で勉強を続けていたのだろう。黒子の心配に気遣う様子もなく死ぬ…! と潔い弱音を吐いた。そこへ小金井が昼は図書室でやるという宣告を。

「蓮見も時間あったら来いなー」
「はーい」

火神と千夜の生返事を聞き流し、頭のいい二年生は颯爽と一年のクラスを去った。

がたりと席を立った火神は相変わらずの死にそうな表情で話を変えた。何故か黄瀬からメールがきたらしい。火神は黄瀬のアドレスなど知らないのに、何故。
千夜は頭を必死に働かせる。火神と黄瀬はまだ片手で数えられるほどしか会っていない。その数回でアドレスを交換するほど仲が良いようにも見えなかった。とすると、誰かが黄瀬に教えたのだろう。この二人の共通する、友人は。

「僕が教えました。メアド」
「勝手に教えんなよ!」
「千夜さんのも教えてほしいといわれましたが断ったので大丈夫ですよ」
「…よかったぁ」

何に対しての良かった、なのか。自分のアドレスの拡散が嫌なのか、それともまだ完全に信用できない男に連絡先を知られるのが嫌なのか。どのみち黄瀬にアドレスが知られていないのならと、一息ついた。
千夜の電話帳にある男の名前は今現在父とバスケ部男子のみだった。しかし少し前までは父のみだったのがこんなにも増えた。電話帳を開くたびに何とも言えぬ達成感を味わえる。そこに黄瀬の名前はないが。

「…で、そのメールの内容が」

海常高校はI・H出場が決まったから早くリベンジされにこい。というもので、こんなところで、まして勉強で躓いているわけにはいかない。火神は全教科、千夜は英語。テストに向けて気合を入れ直した。

「火神君、千夜さん。どうしてもダメだったら…これを」

黒子が机の上に転がしたのは鉛筆だった。柄の部分には数字の書かれたシールが張られているところを見るとこれは。

「緑間君が昔くれた湯島天神の鉛筆で作った、コロコロ鉛筆です」

いるかっ! と速効で投げつけた火神に、鉛筆は床で跳ねかえり自身の頬を掠り軽い流血騒ぎが起こった。何でも逆らうと攻撃されるのこと。呪いがあるとかないとか。間近で見てしまった千夜はあの緑の巨人に軽い恐怖を覚え「ありがたく頂戴します」と恭しく鉛筆をもらった。しかし、これで、少しは心強くなったというものだ。

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