翌日の放課後、言われた通りのテストを持参し廊下でクラスの違う降旗たちと合流して体育館へと足を運んだ。実力テストは成績には関係ないので一年一同は練習した方がよいのではと、明るく会話を交えながら扉を開くとリコが仁王立ちで口を開く。 「問題…大アリよ!」 大アリだそうです。実力テストの下位百名は来週の土曜日に補習。その日は決勝リーグでもある。テストの点が悪ければ試合に出ることは叶わない。よって、中間テストの結果が悪い者はリコの家で勉強合宿をすることになっている。 カントクん家…? と一年男子はピクリと反応を見せ、それに千夜は少なからず引いた。 二年生から順番にリコにテストを見せついに一年生の番。降旗、河原、福田の三人は難なく通過し残りは黒子、火神、千夜の三人。特に黒子と火神には誠凛バスケ部の未来がかかっているとテストを握る手に力がこもる。まずは黒子が先陣を切った。 国語八十一点、日本史六十三点、数学五十九点、化学四十九点、英語五十五点。 あまりに平均的過ぎる点数に、身構えていた分脱力感が半端なく一瞬、白ける。すぐに国語はいい! とフォローが入ったが、本人はどう思っているのやら。 次は千夜の番となり、恐る恐るテストを渡す。リコがテストを捲りながら「これなら問題ないわね」と安心しかけて、ある一枚の答案用紙を見て固まった。それは英語のテストだった。 「千夜ちゃん…英語どうしたの」 「あ、……え、と」 気まずそうに目を泳がせる彼女を不審に思った日向たちも千夜のテストを見ると、どの教科も六十から八十点台とまずまずだが英語だけが三十一点と極端に低かった。 「英語、は、苦手で……というか、日本人なんだから英語は必要ないと思いますカントク!」 「その大声を普段の練習で出しなさい! 英語は使うものよ」 千夜は苦手な英語への不満を力一杯言うと、リコの正論に押し黙った。 それなら、英語は帰国子女である火神に教わるのが一番と思考を巡らせていると、火神がごくりと喉を鳴らした。「お前ら…そんなに頭よかったのか…」とその発言に二年は目を丸くして火神を見る。平均的な点数の黒子を頭が良いというのだから、言わずと分かる火神の点数。 国語三点、日本史十四点、英語四十一点、生物九点。他にも一桁の点数のテストや、零点のものもあった。 白けるどころか、まるで雷が直撃したかのように固まる二年生たち。日向に至っては眼鏡にひびが入った。 「英語悪いって何!? 帰国子女だろオマエ!」 「なんだよ! 蓮見の英語は火神に任せようと思ったのに!」 「四十一点!?」 キレる二年生を尻目に火神は言葉なんて通じればいいと開き直りリコに背負い投げをされている。あまりにひどい火神の学力に、二年生が全員で面倒を見ることになった。 かくして、火神の学力と千夜の英語をどうにかするべくリコの家で猛勉強が始まった。 |