青林檎の微熱 | ナノ

授業を終えるチャイムが鳴り、休み時間に入る。休み時間は友人と駄弁ったり、趣味に費やしたり、本を読んだりと各々が好きに使っている。部活以外の学校の楽しみの一つでもある。そんな時間を黒子と火神と千夜の三人は主に駄弁ることにしていた。今日の話題は誕生日について。

「俺は八月二日」
「あれ火神君って体重八十二キロでしたよね。覚えやすいです」
「なあもしかしてバカにしてんのか?」
「してません」

額に青筋を浮かべる火神に千夜はすっかり萎縮して口を閉じた。この二人はよく喧嘩をするのだが未だに慣れず、特に火神がキレるのを恐れた。火神はふてくされながら黒子に振り、黒子は日付を確認し自分の誕生日が今日であるとさらりと告白。

「え?」

一番初めに反応を見せたのは千夜だった。パッと顔を上げて黒子を見る。思いがけない黒子の告白に驚きを隠せず狼狽えた。その姿を黒子と火神は微笑ましく見守り、彼女の次の動きを待つ。手振りを付けながらわたわたとした後、ようやく落ち着きを取り戻し、口元に微笑を滲ませた。

「あ、お、おめでろう」
「! …ありがとうごさいます」

彼女の言葉を噛みしめた。まさか、祝ってもらえるなんて。胸に響く彼女の声をいつまでも聞いていたい。

「…おい、蓮見、お前今か」
「蚊が止まってますよ火神君」
「いってぇ!」

火神のセリフを遮るかのように黒子は横腹を突いた。噛んだ、と言ってしまっては彼女が必死に捻り出した「おめでとう」の言葉が無駄になる。千夜が噛んだことについて黒子は無視を決め込んでいたというのに。全く火神は。少しは空気を読んでほしいものだ。
黒子は心の中で毒づき千夜に視線を移した。彼女は自分が噛んだことを自覚して頬を林檎みたいに赤く染めていて、祝ってくれた彼女をどうして責められようか。
いつか彼女の誕生日はもっと華やかに祝ってあげたいものだと黒子は一人計画を練った。

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黒子君誕生日おめでとう!

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