青林檎の微熱 | ナノ

公園のベンチに隣同士に座った千夜と高尾は傍から見れば初々しいカップルだった。彼女が顔を赤らめ彼氏が優しくリードする、そんな風景。
だが、当人たちはそうでもなかった。千夜は照れや焦りを隠すため必死に何度もお礼を言って気を紛らわそうとし、逆効果であることに気が付く。自ら焦る様に行動していたとは思いもよらず、落ち着くために黙って見ると沈黙が何とも重苦しい。せめて、隣に居るのが黒子や火神だったなら。など考えて高尾に失礼だとすぐに考えを改める。
あ、と高尾が声を漏らすと「迎えが来たぜ」と言って席を立つ。

「またなっ蓮見ちゃん」

(蓮見、ちゃん?)

ちゃん付けをされるということは、仲良くなれたということだろうか。彼に失礼や迷惑はなかったということだろうか。
遠くの方からぱたぱたと足音が聞こえ同時に名前を呼ばれた。声の方を見てみると黒子が息を切らして膝に手をついて呼吸を整えていた。

「テツヤ君?」
「やっと、見つけました、帰りが遅いからみんな、心配してたんですよ」
「ご、ごめんなさい、」
「さあ、戻りましょう」

そう言って黒子は千夜が捻挫をしているのを知ってか知らずか手を差し伸べ、彼女も恐る恐る手を取り立ち上がった。

「か、かたじけない…」
「…千夜さんて時々言葉遣いおかしくなりますよね」
「え…そう、かな?」
「はい、今もそうだしこの前の手つなぎ鬼の時だって、やらねばならぬのか、って呟いてましたよ」
「……えっ! や、やだ、うそ。わたしそんなこと言ってたの」
「ええ、しかとこの耳で聞きました」

瞬間、ぼっと耳まで真っ赤に染め上げる。黒子はふっと笑って彼女に合わせゆっくりと足を進めた。二人の時間を大切にするかのように、ゆっくりと。

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