青林檎の微熱 | ナノ

休日の練習。テーピンク用のテープにドリンクの粉末等の備品が不足していた。という事で、リコに頼まれ買い出しに行くとこになった。
支度をして町へ出る。どこに売っているとかは以前リコに教えられたから問題ない。必要なものだけ購入して、帰ろうと歩き出し公園にさしかかったとき、背中に誰かがぶつかった。突然の事に受け身も取れず片手はふさがっていたので大胆にも転倒。袋の中身も散らばった。やっちゃった、と心の中で言いながら拾い集め立ち上がろうとすると、ずきっと痛みが走る。

「いっ…た、」

もしやと思いジャージをめくりひねってしまった足を見てみると酷く腫れ上がっていた。溜息をつき、いつまでもここで転んでいるわけにもいかないので、何とか立ち上がり足を引きずりながら公園ベンチで休憩することにした。少し休めば治ると思い暫くここで痛みが引くのを待ったがいつまで立っても治まらず、むしろ悪化しているような気がする。ふと空を見上げるとあんなに晴れていたのに今は曇天。いつ雨が降ってもおかしくない天候だ。ああ、ついてない。誰か知り合いが通りかからないかな、なんて願いながら痛みが引くのを待つ。この天気に公園で遊んでいた子供たちももう一人もいない。どうしようかと俯いた。自分の運動靴と地面が見える。その視界に別の靴が映り込むのと声がかかるのはほぼ同時だった。
あれー? 君、誠凛のマネジじゃね?
明るい調子の声に顔を上げると黒髪の、見覚えのある顔。

「あ……秀徳の…緑間君の頭にお好み焼き乗っけた…」
「ぶはっ俺ってそんな認識? 高尾和成ってーんだ」
「……どうも、」
「蓮見さん、だったよな? 何やってんの?」

気さくに話しかけてくる高尾にテンパりながらも返答する。ここには自分と高尾の二人しかいない、自分がしっかりしなくては。高尾と千夜がこうして言葉を交わすのは初めてであり、高尾が千夜を知らない。よって、何故赤面しているのかを知らない。

「こ、転んでしまって、」
「でもその様子じゃずっとここにいるようだけど。捻挫でもした?」
「恥ずかしながら…」
「あ、なんだ持ってんじゃん、テーピングテープ! やってやるから足出して」
「え」

何故見知らぬ男にテーピングをしてもらわなければならないのか。厚意は嬉しいがこれは中々の、もはや嫌がらせレベルだ。だが痛いものは痛い。そして早く帰りたい。恥ずかしさを何とか誤魔化し高尾に足を固定してもらった。

(ああ…今なら恥ずかしさで死ねる…)

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