青林檎の微熱 | ナノ

秀徳戦を終えた次の日のこと。

「蓮見さん僕たち勝ちました」
「うん、おめでとう」
「ありがとうございます。それよりもカントクの言ってたこと覚えてますか?」

ん? と首をかしげ目線を右上にやり、黒子の言う、リコの言っていたことを思い出す。数秒後、思い出して頬を赤く染めた千夜は「もしかしてほっぺにちゅー…?」と念の為確認をとったが黒子によってそうです。とバッサリ言い切られた。
両手を顔の前に出し無理無理、と連発し後ずさりする彼女に、さすがにいきなりは無理かと早々に諦めた黒子が別の案を出した。それはほっぺにちゅーができないなら名前で呼んでほしいと、僕も名前で呼びたいと。少し悩んで千夜はそれなら…と納得してくれた。

「て、テツヤ、君」
「なんですか? 千夜さん」

下の名前を呼んだだけでも更に赤くなる千夜を見て、本当に男慣れしていないのだと改めて思った。これでは当分恋愛はできないだろうに。千夜に惚れた男は苦労するなと人ごとに思ってみたりして、とりあえずは名前で呼び合える仲になった自分を心から褒めたい。あんなに怖がられていたのに、目も合わせてくれなかった彼女が自分の名を呼んだ。それも照れ臭そうに。これは日本史に残る凄い事である。もしかしたら全米が泣くかもしれない。

「名前で呼ぶのって、なんか照れるね」

確信。彼女は照れている。全米が泣いた。黒子君からテツヤ君になっただけで。もうなんなのこの可愛い生き物。誠凛バスケ部は黒子と千夜を隅から盗み見てほっこりしていた。
いいなあ黒子、死ねばいいのに黒子。俺達なんてまだ先輩としか呼ばれてねえのに。先輩はいっぱいいるから先輩の前に苗字をつけて呼んでほしいのに。つーか何ちゃっかりカントクのほっぺにちゅーを改良して名前で呼び合ってんの!?
ほっこりしていた雰囲気は一変、その一角からは殺気ともとれる恐ろしいオーラが見え隠れしていた。その気配を察知した黒子はチラリと日向たちを一瞥しわずかに口角を上げた。

「俺、カントクに今日の練習三倍がいいって言ってくる」
「待て日向!」
「落ち着け日向!」
「それは俺達への被害も甚大だぞ!」
「知るか、んなもん!」

日向の暴走。クラッチタイム入ってました。

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