青林檎の微熱 | ナノ

黒子と黄瀬の間にひと波乱あったが空腹に負け、黄瀬を除く四人はそれぞれ注文を取った。火神の呪文のように続くオーダーに黄瀬さえも突っ込みを入れた。結果、大きな鉄板の半分以上が火神のお好み焼きで埋め尽くされた。それらを頬張りながらバスケについての話が始まり千夜は疎外感を感じずにはいられなかった。一人静かに食べ続けていると話は進み、いつの間にか話題は黄瀬と千夜の事になっていた。黒子が詳しく教えろと掘り下げ、意外なことに火神までもが食いついていた。問題は千夜が黄瀬についてどう思っているのか。彼女の答えはこうだった。

「自分に自信を持ってて凄いな、って……。かっこいいとは思う…けど、あんまり興味ないや」

そうは言っても、やはり下心というものはある。仲良くだってなりたいし、かっこいいとも思っている。けれど。黄瀬の事はあまり知らないし、正直まだ恐怖心の方が勝っている。ここで、あ、と自分の失言に気が付いた。興味がないというのは失礼すぎるのではないか。不快にさせてしまったのではないか。怒らせてしまっただろうか、睨まれるだろうか、…殴られるだろうか。次々と湧き上がる不安に、背中に汗をかく。だが、そんな心配は必要なかった。
「蓮見っちにふられたー」と口を尖らせ嘆く黄瀬に、黒子の唇は自然と弧を描いていた。決して、ざまあ、なんて思っていない。決して。残念だったなモデル、蓮見さんはお前にはなびかないんだ。黒子の脳内フィーバー中。
駄弁っていると緑間にお好み焼きが振りかぶったり、火神が全て完食したりしているうちに雨は上がっていた。秀徳二人は先に席を立ち誠凛を応援して店を出た。「次は勝つ!」と言い残して。
食事をとって誠凛の皆も体力が戻り次の決勝リーグへ意気込む。千夜は伊月と並んでお金を払おうと財布を取り出すと、お好み焼きだけとは思えない高額。五万円。思わず言葉が喉でつかえた。

「ごっ…」
「あのバカ何枚食ったんだ」

あの伊月が冷静さを失うほど。いくら財布を探しても諭吉は三枚しかなくあとは小銭のみ。千夜も財布を取り出しなけなしの二万円を支払った。申し訳なさそうに「ごめん」と繰り返す伊月に、多めにお金を持ってきてよかったと胸を撫で下ろした。

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