「すまっせーん。おっちゃん二人空いて……ん?」 そこには先ほど試合をした眩しいオレンジ色のジャージの秀徳高校の二人、緑間と高尾が暖簾(のれん)をくぐり入ってきた。お互いが姿を認めるなり乾杯の手を止め固まる。彼らも雨宿りを兼ねて近くにあったこの店を選んだらしい。他の部員とはぐれたようで二人だけでの来店。先ほど試合をしたばかりで居心地が悪く店を出ようとしたものの猫も吹き飛ぶ強風と豪雨により外へ出られない。言わずもがな、店内に戻る。高尾が笠松の存在に気が付き、誠凛に交じり席に着いた。笠松が抜けたところには緑間が座っている。他に席がなかったようだ。その結果、黄瀬、緑間、火神、黒子に加え千夜の五人。 あの席パネェ! と誰もが思った。そして、言わずもがな彼女の安否が気になった。 当の本人はというと黄瀬や火神でさえ冷や汗ダラダラなのに耐えられるわけがなく。ガタガタガタガタ、体が震え涙目だ。彼女からすれば、逃げ場のない部屋に猛獣と閉じ込められたような恐怖だった。 「おいそこの……誠凛のマネージャー」 「はっ…い。なんでしょうか」 あまりにガタガタ震えるものだから気になったのか、腕を組んだ緑間が声をかけたらこの始末。片言になっている。 「お前は何をそんなに震えている? 寒いのか?」 「え、蓮見っち寒いの? 雨で濡れちゃった?」 「ち、ちが、ちがいます平気です」 「寒いならこれ着とけよ」 バサッと投げられたのは火神のジャージ。別に寒くはないのだが折角の厚意を無下にするワケにもいかず、彼のジャージを羽織った。ドロドロとはいえ幾分か乾いていたのでマシだった。 しかしいざ着たとなると千夜にとって火神のジャージは相当大きく手が出せない。足りない腕の探さの先はダラリと垂れ下がっている。火神が大きいのは知ってきたがここまでだとは思っていなかった。それは火神も一緒で、改めて千夜の、というか女子との体格差を知った。所謂彼ジャージってやつ。 「蓮見っち、かわ…ぐふっ」 「とりあえず何か頼みませんか」 「く、黒子っち…」 痛い…と涙目で腹部を押さえる黄瀬は知らんぷり。黒子が黄瀬に何をしたかなんて言うまでもない。お察しください。 |