青林檎の微熱 | ナノ

I・H決勝戦。王者の一角、秀徳高校との試合は残り一秒で黒子が緑間のボールを叩き落とし何とか勝利。だが空は生憎の雨模様。スタメン一同は体力が付きゾンビが如く。火神に至っては立つことすらままならない。
か、火神君。大丈夫? 立てる?
千夜がおずおずと手を差し出せば意外にも彼女の手を取り立ち上がろうとするも火神の体力が尽きたのか千夜の腕力が足りないのか、火神は全く動かない。取りあえず火神は誰かがおぶり近くの店に入ることになった。誰がおぶるかはじゃんけんで決め、黒子になった。

「あ…あの、ごめん。わたしが火神君を支えられれば良かったのに。黒子君も疲れてるのに……」
「気にしないでください。火神君の重さを女性が支えるのはきついですから」

目を細め紳士スキル丸出しで言う黒子に申し訳ないと何度も頭を下げた。火神を担ぎ外に出て約三歩、黒子ダウン。「すいませんもうムリです」と言うともとに火神がドロドロの地面とご対面。結局火神は痛む体を引きずるように歩き鉄板キッチンという店に入った。そこには一足先に来ていたのか海常の黄瀬と笠松がもんじゃ焼きを頬張っている。
急に大人数で入ったためか席が足りず親切な笠松のおかげで相席をすることになった。千夜はリコの隣をキープしていたが残念ながら入ることができず、どこに座ろうかとあたふたしていると黒子がどこからか椅子を持ってきて黄瀬、笠松、火神、黒子と相席することになり内心号泣中。位置はというと、向かい合って座る彼らの真正面。大号泣だけに留まらず内心大絶叫。

(やばいやばいやばいやばい、し、死ぬっ死ぬっ! 落ち着け心臓!)

こっそり深呼吸したり手のひらに人という字を書いたり平常心を保とうとしている千夜に黄瀬は空気を読まず気さくに話しかけてきた。蓮見っち、お久しぶりっスね。なんて。黒子が見逃すはずもなく知り合いですかと聞くと、お茶した仲なんスよ、と。
黒子は一人悶々と考える。あの千夜が、どんなにモデルでイケメンで同じバスケ部でも自らお茶に誘うわけがない。これは断言してもいい。そうなると……

(この男がナンパした……だと!?)

口調が迷子である。「また会えてうれしいっス」とか抜かしてるモデルが最高に腹立たしい。テンパる千夜と迷走中の黒子をよそに各々飲み物を注文し、二人も慌ててオレンジジュースを頼みビールジョッキのような大きなコップを高々と掲げた。

「よし、じゃあ……カンパー……」

乾杯をしようとした矢先、店の扉が開いた。そこにいた二人を見て千夜はやっと落ち着いてきた心臓がまた、バクバクと音を立て始めた。

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