青林檎の微熱 | ナノ

放課後の体育館。そこには部員の影はなくリコと千夜の二人のみ。今日、千夜には重大な任務があった。これはもう決まったこと、ずるずると引き伸ばしていたがもう逃げない。もう怯えない。もう怖がらない。もう、大丈夫。
いつもより少しだけ大きな声で。

「カントク! 本入部届ください!」

その一言にリコは言うまでもなく目を輝かせた。「やっと入部してくれるのね!?」と抱き着いてきた。一週間の仮入部のつもりだったがバスケ部は千夜が思っていたより居心地がよく、面白く、楽しい。あっという間に一週間など過ぎ去っていた。ルールについて知れば知るほど分からないことが増え、それでも誠凛のバスケ部を支えたいと思った。ついでにここにいると少しづつではあるが男と話す近づくには慣れつつあったから。動機はそんなところだ。
これでようやく本入部に落ち着いた。と、千夜は思っていた。

「千夜ちゃん知ってる? 朝礼の日に屋上から今年の目標を宣言するの」
「はい、すごかったですよね火神君」

そうだ月曜日の朝礼、屋上からバスケ部が目標を叫んでいた。まさか。ギギギと硬い動きでリコを見る。

「あ、あれを、やれと……?」
「本当はやってほしかったけど時期が時期だしね。今日の部活前に体育館で言ってもらうわ」

***

「キセキの世代を倒して、バスケ部が日本一になるまで全力でサポートしてい、いきたい、いきます! えと、よろしくお願いします!」

頭を下げると拍手が起こった。あの蓮見が…男しかいないバスケ部に入部。さらには人前でこんな大声を出すなんて…。
リコを含めバスケ部はもう彼女の保護者になったような気分だ。これが盛り上がらずにいられるか。上体を起こし部員を見ると千夜はへにゃりと笑った。

「改めて、これからよろしくな。蓮見」
「はいキャプテン」

差し出された手に、そろそろと手を伸ばし軽く握り返した。すると日向はぐっと。彼女の手を固く握った。

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