青林檎の微熱 | ナノ

「――とまあ、こんなことがありまして」
「ちょっと、待ってください。灰崎祥吾って…」

あれ、知り合いだった? と首をかしげる千夜に対し黒子は机に手をつき立ち上がった。灰崎祥吾め、ギリリと歯を食いしばった。それに、その助けてくれたと言う赤い男子というのも恐らくキセキの世代の主将のアイツだろう。自分が彼女と知り合う前から面識があったなんて、腹立たしくてならない。

「く、黒子君? どうしたの? 眉間に皺寄ってるよ?」
「あ、何でもないです」

ビクビクしながら本当? と顔を覗き込んでくる千夜。思えば積極的になったものだ。微笑んで頷くと納得したのか顔を離した。

(……彼女が男性恐怖症でなければ今よりもっと仲良くなれていただろうか)

これが友愛なのか父性なのか恋愛感情なのかは分からないけれど。もっと近づいたり、スキンシップもとれただろう。

「最近は僕や火神君とも普通に話せてますし克服できてると思いますよ」
「うん、ありがと。二人は話す機会が多いから慣れたのかもね。喋るだけなら、テンパらないよっ」

自信満々に言ってのける千夜に黒子は少しだけもの悲しさを覚えた。彼女と仲が良いのは自分だけでいい、とか。正直、克服しないでほしい、とか。他の男子と話さないでほしい、とか。とても本人には言えやしない。火神と、それを怖がる千夜は見ていて何とも愉快な光景だったから見れなくなるのは惜しい。

(……あ、れ)

黒子は考えを改めてみた。千夜に男性恐怖症を克服してほしくない理由それは。男子と話さないでほしい。仲良くならないでほしい。これじゃあまるで。

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