青林檎の微熱 | ナノ

「蓮見さんは、どうして男の人が苦手なんですか?」

それは黒子の唐突な質問から始まった。以前、一緒に出掛けた時に聞いてみたことではあるが、何かもっと根本的に彼女は男というものに苦手意識を持っているようだ。まあ、黒子を含む一部は例外だが。
…それ、聞いちゃう? と眉を八の字にして薄く笑った千夜に是非と頼み込むと何度か深呼吸をしたのち話してくれた。千夜の男が苦手なもう一つの理由。

「…中学校でさ、ちょっと色々あって」
「色々というのは?」

えーっと…。言いにくそうに目を泳がせる。そして、ようやく口が開かれた。

「うん、本当に色々あって…詳しくは聞かないで欲しいんだけど、……お茶をね、ぶちまけちゃって、転んだ拍子に。男子にかけちゃって。……すごい怒られちゃって。それからかな」

何があって色々なのかが非常に気になるものの、聞いても教えてくれる雰囲気ではないので深くは追及しないことにした。
それにしても、色々というのは恐らく不慮の事故だろう、千夜がお茶をぶっかけた相手は一体なんなんだ。その事故がある前の彼女は男性恐怖症ではないはずだ。彼女の性格を考えれば謝りもしないなんて事はないだろう。わたわたと慌てながらにも必死に謝罪をすることだろう。そんな彼女をどこの誰とも知らん男が怒鳴り散らしたというのか。
黒子の想像が独り歩きをしているようだが、大体このような理由があって千夜は男という生き物に恐怖を覚えるようになった。

「そういえば、蓮見さんて中学校はどこだったんですか?」

蓮見千夜のことは知っているつもりだったが、意外と知らないことが多くどさくさ紛れに出身校を聞いてみた。すると驚くべき答えが返ってきた。

「……帝光中学校だよ?」

なんと。同じ中学校だったのか。驚きを隠せない黒子。

「あの、因みに、お茶をかけてしまった人は誰だかわかります?」

もしかしたら自分の知っている人間かも知れない。そうだったとしたら、ここに引っ張ってきて千夜へ謝罪をさせたい。彼女を男性恐怖症にした張本人。千夜が静かに口を開いた。
お茶をかけてしまった相手、その男の名は――…。

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