青林檎の微熱 | ナノ

手つなぎ鬼開始のホイッスルが鳴ると同時に黒子は千夜と逃げる部員を追いかけはじめた。
…はずだった。
千夜が緊張のあまり変に力がかかってその場から動けずにいた。数秒の後、我に返り黒子に引っ張られる形で今度こそ手つなぎ鬼が開始した。既に黒子達から遠く離れた場所にいる部員を追いかけ捕まえようとするも千夜が遅れ手が届かない。軽々と避けられ、開始五分、まだ誰一人として捕まえられていない状況にあった。
だが、それだけ時間が経ったという事は、千夜が黒子と手を繋ぐことに慣れたという事になる。黒子に引っ張られながら走っていた千夜も自ら手を伸ばし本格的に手つなぎ鬼に参加した。おかげで余裕ぶっこいて鬼の後ろをついて来ていた火神を見事捕まえることに成功した。
千夜に捕まってしまった火神は、自然と千夜と手を繋ぐことになるがそれを黒子は許さなかった。

「火神君はこっちです」

すかさず千夜の前に立ち塞がり無理矢理にも火神の手を取る黒子。
何が悲しくて、野郎二人で手を繋がなければならないんだ。
黒子と火神の思考がシンクロした。もとい、火神に千夜の手を握らせないために自分が鬼をやると名乗り出たのだ。ここで火神に彼女と手を繋がれては意味がない。今までの苦労が水の泡だ。少々不満はあるものの、火神と手を繋ぎ手つなぎ鬼再開。足の速い火神が加わったことにより、今度は黒子までもが引っ張られるようにして走り出す。よろけながらなんとかついて行くと火神はかなりのスピードで部員たちを捕まえていった。
三十分後、あとは小金井ただ一人。怖いんだけど! と半泣きで逃げる彼を二、三人のペアに分かれ体育館の隅へと追いつめる。逃げ場を失った彼を捕まえて、ようやく手つなぎ鬼は終了した。息も絶え絶えに膝に手をつき呼吸を整え、黒子と全員を捕らえることができた喜びに浸る。

「…やったね!」
「ええ、頑張りましたね。僕ら」

黒子の顔を見て心底嬉しそうな顔で笑ったと思えば、瞬間、真っ赤にして手をぱっと離した。今まで散々繋いでいたのに今更になって恥ずかしさが戻ってきたようだ。
本当、初々しいなあ。
部員の心がまた一つになった。少し汗ばんで温かかった千夜の手の感触を名残惜しいと思いながら黒子は、リコのアイディアに心底感謝をしていた。

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