青林檎の微熱 | ナノ

リコはある悩みを抱えていた。千夜がマネージャーの仕事をしてくれるのはいい、しかし、体力がなさすぎる。ホイッスルをくわえながら考えていると、一つのアイディアが頭に浮かぶ。中々良い案に思わず口角がつり上がる。当の本人千夜はまだ来ていない。
そこへタイミングがいいのか悪いのか、火神と千夜が現れた。全員が集まったことを確認し、リコは部員に集合をかける。それぞれが練習の手を止め集まると不敵に笑うリコに若干の恐怖を感じながらも監督の発言を待つ。

「手つなぎ鬼、しましょうか」
「……はい?」
「だーかーら! 手つなぎ鬼! 千夜ちゃんも参加ね」

ボール磨きを始めようとしていた千夜の表情が引きつった。体力作りにもなるし、何といっても男と手を繋ぐ。少々荒治療だが。え、わたしも…? とでも言いたげにリコを凝視する。そんな千夜を意に介さない様子で続けた。
鬼は火神君と千夜ちゃん、よろしく!
ピシッ。千夜の表情が固まるのを小金井はしかと見た。すかさずフォローを入れる。待って、いきなりそれは厳しいのではないかと。いつの間にかいた黒子も鬼の火神を変えてほしいと懇願した。

「待ってください、それでは身長差がありすぎます。蓮見さんと馬鹿でかい火神君が鬼になるのは得策ではないかと」

確かに。鬼となって部員を追いかけるだけでも息が上がるだろうに、火神の高さで背の低い千夜が手を繋いだら腕が疲れる。よって鬼は火神以外となった。千夜は何故自分ではなく火神を交代させるのかを疑問に思う。
鬼は誰にするかと悩んでいると黒子が名乗りを上げた。自分が一番千夜と背が近いから。異論はなく、鬼はこの二人に決定した。
やらねばならぬのか。緊張のあまりおかしなことを口走った千夜。差し出された黒子の手におずおずと手を伸ばすと、黒子が千夜の手を取った。瞬間、心臓がドクリと音を立てたが、それは千夜だけではなかった。

(蓮見さんは手も小さいんだ。すべすべしている)

柄にもなく緊張した黒子は内心おかしなことを考えていた。相変わらず表情筋は機能していない。一方千夜はというと、

(っ手! 手汗が、手汗がっ! やばいやばいやばい!!)

同じくこちらも相変わらずだった。
手を繋いだだけで真っ赤になっている初々しい千夜を微笑ましく眺めた後、手つなぎ鬼は始まった。

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