青林檎の微熱 | ナノ

帰宅しいつものようにベッドへダイブ。さすがに毎回毎回やっているせいかスプリングがギシギシと音を立てた。ポケットをあさりメモと携帯電話を取り出し電話帳を開いた。
見学とはいえ、連絡をとるために必要だとカントクに言われ番号とアドレスを交換することとなり部活中にもらった番号とメールアドレスの書かれたメモを見ながら入力していく。名前はカントク、で登録完了。
新規でメールを作成し蓮見千夜です。明日からよろしくお願いします。と打って送信ボタンを押す。ふぅ…と長い息を吐きもう一つのメモに目を通した。携帯番号とメールアドレスの書かれたもう一枚のメモ。
ああ、そういえば渡されてたっけ。登録を拒む理由はないがメールを送ることはあるだろうか。彼、黒子テツヤに。リコと話し終えた後、目をらんらんとさせた黒子に

「僕も蓮見さんのメアド知りたいです」

なんて詰め寄られテンパった千夜は勢いで頷いてしまった。
リコと全く同じ文章を打ち込み送信。直接話すよりかは幾分かマシだが緊張することに変わりない。手に変な汗かいた。ピピッとすぐに携帯が鳴り開いてみると黒子からだった。よろしくお願いします。という短いものだったが。
それでも。自分の電話帳に父以外の男の名前があることじたい初めてで、なんだか嬉しいような照れ臭いような、不思議な心境になった。もしこのことを母に言ったらどんな反応を見せるだろうか。「やっと男の子と仲良くなれたのね」なんて笑うだろうか。それとも「今日はお赤飯にしなくちゃ」と暴走するか。どちらにせよ母でさせ驚くというのに自分が冷静でいられるわけがない。

(明日、黒子君に会うの恥ずかしいな)

枕に顔を埋め何故か照れる千夜だった。
それだけ、黒子を意識するようになったのも事実。男性恐怖症の千夜が、恋、なんてするわけがないのだ。席が斜め前というだけじゃない、明日から、男バスに仮入部するから。きっと平常心でいるのは至難の業。クッションを抱きしめて、ベッドの上を転がった。

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