「お金ですか! 払いますよ!?」 「そうじゃない。赤の他人をいつまでも家に置いておけるか」 ましてや未成年者を。と続けると家には誰もいないと寝転がったままソニックを見上げさらに頼み込む。それだけ元気ならもう帰れお前、と言いそうになって、思わず息をハッと飲んだ。またアオイがごふ、と吐血した。床に赤が散らばる。発汗が尋常ではなく短く息を吐き出しながら喉元を押さえ呻きながら蹲った。 「おい、どうした」 「…、なん、げほ、でもな、い、っ」 「見え透いた嘘はやめろ」 傷は塞がったとは言えないが、この発汗の量は普通ではない。何故だ。毒か? 彼女が言うには、あの怪人には毒があるようで、噛みつかれた箇所から体に毒が回って立ち上がることができない。移動手段はほふく前進の要領で這っていくか、転がるしかない。毒が完全に抜けるまで置いてほしいと足にしがみつかれた。なんだかデジャヴ。 「……ああ、もう、鬱陶しいな! 分かったから、置いてやるから、離せ!」 「やったー!!」 口の端に赤をつけたまま万歳をして床を転げまわる。踏み潰してしまいそうだ。というかさっきまで床に血を吐き散らしていたのは誰だ。お前だ、アオイ。急に弱ったと思ったらまたいつも通り。自分で綺麗にしておけよ。 かくして2人の不思議な同棲生活は始まった。 食事だけは台所まで届かずソニックが作らなければならない。とにかく夕食を作り彼女の前に置く。いただきまーすと両手を合わせ食べ始めた。アオイにも人並みに羞恥心はあるから風呂やトイレは意地でも1人でなんとかすると息巻く。 ソニックは本当に猫を飼い始めた様だとしみじみ思う。依頼料は治療費も込めしっかりいただいた。 「お前は猫のようだな」 「それってどういう意味ですか」 「気にするな。悪い意味だ」 「気にする! すごい気にする!」 「この自由人め」 「えー、例えばどの辺ですか」 「誰か教えるか。自分で考えろ」 …どこだ? と本気で悩みだすアオイにソニックは小さな笑みを零した。 例えばその言葉遣い。敬語を使ったかと思えばタメ口になったり。掴みどころがない。まだお互いに知っているのは名前だけ。本心は見せていない。利害の一致かと言われればそうでもなく、ソニックには何の利点もない。それなのにアオイを置くのは本当にただの気まぐれ。ソニックの方がよっぽど猫のようだ。 |