ついったログ | ナノ
女の子に誕生日プレゼントとして手作りのぬいぐるみをもらった。少しほつれている箇所を見つけたので直してあげようと糸を切る。中に入っていたのは白い綿ではなく黒い髪。思わず手から離して落としてしまった。するとゴトン、と重量感のある音。おかしい。少しの罪悪感を覚えながら頭に鋏を入れる


そこに入っていたのは小型のカメラ。目のところからレンズが覗く。なんだこれなんだこれ。気持ち悪い。もう人から貰った物とは言え、これは悪ふざけの域を越えている。髪に隠しカメラ。ぬいぐるみを新聞紙にくるんで家の外のゴミ箱に捨てに行く。そこであのぬいぐるみを渡した女の子と遭遇


ひゅっ、と息を飲む音だけが聞こえる。一方彼女の方は嬉しそうに話しかけてきた。

「及川さん、プレゼント見てくれました? 可愛いでしょう? わたし、裁縫得意だから頑張ったんです。及川さんがぬいぐるみを側に置いてくれたら、いつでもわたしが側にいるみたいで素敵でしょう? 嬉しいでしょう?」

彼女は一体誰だろう。こんなことをするくらいなのだから、きっとファンの子の一人だろう。でもこんな、まるで、ストーカーみたいなことをするなんて。勘弁してくれ、というのが本心。

「…うん、あ、りがとう、ね」

絞り出した声は情けないくらい震えていて、彼女はまた、嬉しそうに笑った。


「及川さんがわたしの髪、綺麗だねって誉めてくれたんですよ? 撫でてくれたんですよ? すっごく嬉しかった。初めてそんなこと言ってもらって、わたしすっごく嬉しかったんです。だから及川さん、わたしの髪貰ったら喜んでくれると思ったんです」

狂気混じりの、彼女の告白。


ああ、思い出した。この子は確かにファンの子。腰まである長い綺麗な黒髪が印象的だったから、それを誉めたんだ。女の子って怖いなあと思いながら、ぬいぐるみなんか放り投げUターンして全力で走る。

なんで、誕生日なのにこんな目に遭わなければならないのか。それはあなたが及川さんだから!
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