失声彼女
好きだなと思っても、愛しいなと思っても、あなたに伝える方法がない。わたしの声は出ないから。伝えられない言葉は伝わらない。どうせわたしの言葉は届かない、と落ち込む。不器用なくせに鈍感なくせに。こんな醜い感情ばかり伝わって、彼の優しさが痛い
泣くもんか、と思っていたのだけど影山君の姿を見たら堪えられなくなって、後ろから抱き付いた。そしたら「離せ」って言われて、悲しかったけど彼が言うのだから仕方ない。行き場を失った体を影山君がくるりと向きを変え、正面から抱き締めてくれる。どうした、なんて優しい声色で
体調が悪くてぐったりしてたら影山君が近付いてきた。
「どうした」
顔も上げずに唸る。
「ヨーグル飲むか」
飲みかけを差し出された。
「これ着とけ」
学ランを肩にかけてくれる。
「お…俺の、弁当、好きなおかずやるから元気出せボゲェ」
彼は意外にも甲斐甲斐しく世話焼いてくれる
影山君は女の子の慰め方を知らない。自分のジャージで女の子の目元をごしごしして真っ赤に腫らしてしまう。それか「泣き止めボゲェ!」って怒鳴って、あーあ、やっちゃった。それか「五秒以内に泣き止まないと犯すぞ!」ってテンパって自分でもなに言ってんのか分からなくなっていればいいよ可愛いよ