非日常的日常 | ナノ

紫原は拾った女の子の隣に腰を下ろし、冷蔵庫から取り出したイチゴ牛乳を二つのコップに分けた。女の子は物珍しそうに、これはなあに? と首をかしげた。

「イチゴ牛乳。知らないの?」
「うん」

コップに注がれた薄ピンク色の液体をじっと見つめ、飲んでみなよ、とコップを渡された。恐る恐る口へ運びこくんと喉を鳴らすと目を輝かせた。
これ、すっごく美味しいね! 甘いよ!
子供のように、いや子供か。イチゴ牛乳だけでこれだけ喜んでもらえるなんて、紫原も嬉しくなり自分もイチゴ牛乳に口をつけた。そこへ、買い物に行っていた緑間が帰ってきた。セールで安く手に入れた食品を抱えて。台所の冷蔵庫に全て収め、居間に入ってきた。女の子の姿を認めると、こんなに幼い子供が依頼人なわけがないと瞬時に考えを巡らせ、また紫原が厄介事を持ってきたのかと深い溜息をついた。それでも、紫原にその子は誰かと問うてみると予想外すぎる答えが返ってきた。

「拾ったー」
「ひろわれたー!」
「……は?」

きゃっきゃと笑う女の子といつの間仲良くなったのか、紫原はこの子をここの住まわせる気満々だ。いやまて、住まわせる気満々? ふざけるな、大体万事屋の食費はどうなる。青峰は働かないし、米とお菓子はいくらあっても足りないというのにそこへ一人増えるだと? このままでは万事屋の財政が。ともあれ女の子と呼ぶわけにもいかず名前を尋ねた。

「…それで、お前、名は?」
「ハルだよ。ねー、ハルちん」
「ねー」

顔を見合わせて、ねー、と二人で首をかしげる。本当のところ、ハルという名前は紫原が勝手につけた名前だ。というのも、万事屋に連れてくる際に名前を尋ねても「わからない」と首を振るばかりだった。だから紫原が今ここでつけた名前だ。

「…里親が、見つかるまでだぞ」
「りょうかーい」
「しっかり面倒を見るのだよ」
「当たり前だし」

緑間、女の子を住まわせる。

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