胸を貫かれた奴に無事だったのかと心配され、それはお前の方が…と途切れ途切れに言葉を紡ぐ。閨に事情を聞いても顔を青ざめさせ分からないという。殺されたはずの弐猫が急に後ろから現れ首を刎ねたと。 「死んでねーよ。俺が偽り人だって知ってんだろ」 得意技は死んだフリ、とおどけて言っているが血の臭いもするし、どう見ても助かるような傷ではなかった。そういえば弐猫は五百年ここのつの宝を守っていると会ったときに言っていた。アレが本当だとしたら何か秘密があるのか。こいつは…神ってのは…「ここのつ」ってのは、いったいなんなんだ。 恐れをなした島民たちは弐猫を化物と罵り仕舞いには小石をぶつけられる。後ろの方ではぎりりと歯を食いしばる音がする。美鷺が、何故か顔をしかめ島民を睨みつけている。弐猫もこれに黙っているわけもなく、敵と対峙しているかのような目に殺気立ち、島民も怯えている。 ありがとうございまーす。 その場に似合わない、間延びした声が下から響く。ぽちだ。怖くないのかと聞かれても弐猫が無事でうれしいと。毒気を抜かれたようにぽちを撫ぜる。そこへ空も戻り森が燃えてたの一言で火事の事を思い出し一気に慌ただしくなった。 *** 負傷した空たちの手当て終え、蝶左と戦った際に切り落した髪を今更になってイジられる。騒ぎつつも空の正面に腰を下ろしている蝶左とその隣にちょこんと正座している美鷺。蝶左がおもむろに口を開く。よく烏頭目相手に生きて戻れたな、と。 「……そんなことより、お前ら領主の娘どうしたんや?」 空含め俺たちの疑問をこの二人は軽くかわし、代わりに砦の中に反乱を企ててそうな奴がいることをほのめかした。美鷺もようやく口を開いた。でもそれは、ひどく残酷なものだった。 「黒羽さんならそんな奴らすぐに見つける。もう死んでたりして」 至極楽しそうにする彼女を見て僅かに恐怖の念を覚える。俺たちは協力者が殺されてしまう前に砦に乗り込むこととなった。俺たち以外にも蜘蛛井と子猪、蛭子という奴が同行する。 こうして俺たち八人(七人+一匹)は砦に乗り込んだ。 |