閨のおかげで見事失敗に終わった守護隊を仲間に引き込む作戦。半泣きで誤られる。事実、俺も宝は物だと思ってたし仕方ない。次の手を考えようと励ましていると、鼻をかすめる焼け焦げる匂い。森の奥から黒い煙が上がるのが見えた。 炎はあっという間に広がり俺たちのいることろまで燃え出した。原因はともかく、俺たちも消化に協力した。こんなことろで死ぬわけにはいかない。弐猫の奴は「ただの火事か。つまんね」など言っている。不謹慎な奴め。閨が今まさに俺の考えを口にし言い争う声に混じり短い悲鳴の様な声と鈍い音。 「なんだ、今の声…」 ドスッと一際近くで音がする。次の瞬間、弐猫の胸から刃が飛び出ていた。血を吐いて倒れる姿がまるでスローモーションのように見えた。 倒れた弐猫の後ろから現れた二人。長身の男と大柄な男。弐猫はこの大柄な方に殺された。 まずは一人片づいたっと…。 燃え盛る炎の中だるそうな声が響く。突然の弐猫の死に閨は崩れ落ち、消火活動をしていた人たちも手を止め現れた敵にくぎ付け。ただ1人を除いて。 「見ろよ万田、俺たち運がいいぜ。ありゃ例の嘘つきの仲間だろ。それに美鷺じゃねェの」 「あれ、蝶左さん」 背後から聞き覚えのある高い声。バッと振り向けば島民たちの間からひょこと顔を覗かせる彼女。まさか。嫌な考えが頭をよぎる。こいつらは黒羽の仲間だ、そんな奴らと親しげに話しているという事は。 「まさかお前…黒羽の仲間だったのか?」 守護隊の一人が叫びいきなり核心に迫る質問をする。彼女は焦る様子もなく「そうだよ」と飄々と言ってのけた。 とぼけるな、密偵だったのか、裏切り者、といった罵声が飛ばされる。ついでに石も。だがそんなのはまったく気にしていない模様。勝手に話を進め、俺たちを殺すべく此方に向かって走り出す。俺は咄嗟に後ろにいる人たちに叫んだ。森へ逃げ込め、と。 気付けば目の前にいた敵、爪のようなもので斬り付けられるも腕で防ぐ。人の心配をしている場合ではない。自分も危ういのだから。大丈夫だ傷は浅いと安心したのもつかの間、ビリ、と何か違和感。 へっ、と鼻で笑う長身。彼は蝶左と言うらしい。武器は毒屍嘴(どくしすい)まるでトンガリコーンだが、その爪の先には毒が塗ってある。俺くらいの体格だと三回もくらえば死ぬらしい。なんとか毒を避けながら戦おうとしたが蝶左の動きは速くあっという間に俺の間合いに入ってくる。バク転の要領でかわそうとするも頬を斬られこれで二回目になりもう後がない。大柄な男は蝶左の案で島民たちを殺しに行った。向こうには閨もいんのに。 「わたしは?」 「美鷺は俺といるワケ。どうせ槍も持ってきてないんだろ?」 「じゃあ応援してますね」 呑気なものだな。 本格的にマズイ事になった。二対一ではないだけでも助かる。アイツはおそらく俺より腕も立つ。正攻法では勝てないことは分かっている。 |