ここのつの宝、"七色の虹"を手に入れた俺らが次に向かったのは大きな橋の先にある出島、人口約500人の鬱陵島。弐猫が言うにはここは治安がいいらしいがどう見ても封鎖されている。 なんとか中に入れたが町の守護隊に見つかり、途中仲良くなった島の子、子猪(しいの)に案内され森奧の坑道にその隠れ家まで来た。そこには外から来たが帰れなくなった者もいた。 その中に一人。周りの人とはどこか違う雰囲気の女がいた。年は同じくらいだろうか。俺と同じだが手入れの行き届いた綺麗な黒髪の彼女。理由はないがなんとなく、惹きつけられるものがあった。声をかけてみようにも、そんな雰囲気ではない。 ここが見つかっては困るから密偵や裏切り者には細心の注意を払っている。 蜘蛛井の話を聞きながら同心は何やってんだと思いつつ赤い目がじっとこちらを見据えていた。俺たちはこの時、既に密偵が紛れ込んでいることを知らなかった。まして、この黒髪の彼女だとは思いもしなかった。 聞くと、天狗黒羽のせいでおかしくなってしまった領主と話すため、砦の中に入りたいがそれは難しい。空が砦の偵察に行くと言い出し俺たちは留守番。閨の恋路を応援しつつ空の帰りを待つ。 後ろから澄んだ声が響いた。 「なんだ?」 「あ…いえ、大した用ではなく。砦に行ってしまったんですね」 「ああ、聞いてたのか」 「はい、無事に戻るといいですね。だって、」 だってあそこには烏頭目がいるのだから。 ぼそり、何か呟いていたが守護隊の隊長が近くまで来ている事によって揉み消された。彼女と別れ隊長と話をつけに行く。そういえば名前、聞かなかったな。まあいいか。 隊長は険しい顔つきで「宝を返してくれ」と膝をついた。さすがにいたたまれなくなり本当の事を言おうとすると閨に止められた。 「待って、薬馬さん!」 私によい考えがありますわ。 …なんとなく、嫌な予感はしたんだ。閨は交換条件として宝を返すかわりに領主の元への案内を要求。 「……わかった…宝を返してくれるなら、案内しよう」 嫌な予感は気のせいだったかと安心したのも束の間、宝と場所を尋ねる隊長。箱にしまって保管していると閨が嘘を重ねればぎょっとする隊長と子猪。ゆらりと立ち上がり敵意しかない目で睨まれる。 「覚えておけ! 宝を殺した罪は…篤とその身に思い知らせてくれるわ!」 どういうことだ、宝を殺した…? 走り去っていく隊長の背中を見る。意味が分からない、あっけにとられていると子猪の説明が入った。 宝、というのは火事のあった日屋敷から攫われていなくなった領主の娘佐熊宝のことなんだと。 目が点になる。改めて事の重大さに気が付いた閨は顔面蒼白。今の感じでは完全に殺して箱詰めにしましたってことになっいるのだから。森の中に弐猫の笑い声と閨の悲鳴が響き渡った。 |