「つーかさー、捕まるとか…ホントダッサ!」 「まだ言うか」 「あれは完全に油断でしたよね」 森の中をずんずん歩きながら烏頭目が思い出し笑い。そう、油断しなければ蝶左と美鷺が負けるはずないのだ。今回はたまたま、仕方のないことだった。 島民も空もいなくなりやることがなくなった三人はとりあえず黒羽と合流するために、空たちを追って砦へと向かった。その道中は仲間を一人失ったとは思えないほど賑やかだった。 「蝶左さん、あの医者に殴られてましたね。グーで」 「お前もいつまでも言ってんじゃねーよ」 「いたっ」 騒ぎながらも砦に着けば酷い有り様だった。宝は公儀の隠密に持っていかれ、黒羽と際刃は下に用意しておいた船で逃走を始めている。となればもうここに用はない。 *** 不意に三つの影が俺の隣を横切った。断崖絶壁を飛び下り先に行く船を追いかける。あいつらは黒羽の仲間の…ともう一人。白髪や奴は空と因縁があるのか、いつか決着をつけてやると。蝶左は俺に借りを返すと。美鷺は俺を睨んだ後、閨に手を振って行った。白髪の落下しながらの「おぼえてろよ〜」という声は美鷺の悲鳴にかき消された。あいつ、泳げないのか。 崖下を覗き込めば今まで黒羽だと思っていた青年に引き上げられている彼女の姿が見えた。後の二人は船に着地するなり泳いで船に上がるなりしている。 あいつらも「ここのつ」を探しているというこはまたどこかで会うことになるだろう。 「……なんか、色々メンドーなことになったような気がするな」 黒羽達はいなくなり領主も殺された。真実を知り、守護隊長も仇討と称して殺された。 こうして、閉鎖島の事件は苦くも終結した。 黒羽や蛭子とはいずれまた会うことになるだろう。空の怪我が治り次第俺たちも島を発ち次の宝を目指す。会いたくないと思う自分と、もう一度彼女に会ってみたいと思う自分がいて空のわがままを聞くことによって気を紛らわせていた。 |