花言葉は…

 花を愛でたくなった私は屋上庭園へと足を延ばしていた。

 気分的には桜を眺めていたかったが、もう葉桜になってしまっていたため、めったに来ないこの場所に来ていた。

「この花…、可愛い。」

 ふと見ると、私好みの可愛らしい桃色の花が咲いていた。

「その花、ジギタリスっていうんだよ。」

「えっ!?」

 突然後ろから声がしたため、驚いて声をあげてしまった。

「フフフ、驚いたかい?」

「幸村か…。」

 声の主はクラスメイトであり、我が立海
テニス部部長の幸村精市だった。

「ごめん、熱心に花を見ていると思ったら独り言を漏らしていたから、つい。」

「ついって…。」

 幸村は女の私が負けてしまいそうな綺麗な微笑みを浮かべていた。

「そういえば、ジギタリスの花言葉って知っているかい?」

 幸村が質問してきた。

「いいえ、知らないわ。」

「フフフフフ、そうかい。フフフ。」

 幸村が突然笑い出した。あまりにも突然だったため、私はポカン…、としていた。

「この花、君にあげるよ。」

 幸村はどこからかハサミを取り出し、ジギタリスを切って私に差し出した。

「…、いいの?」

「ああ。その代わり、条件があるんだ。」

「条件…?」

「ジギタリスの花言葉を当ててほしいんだ。もちろん、調べちゃいけない。」

「それなら、どうすればいいの…?」

 普段、花に無頓着な私に当てられるわけもない。そう、遠まわしに伝えた。

「それなら、ヒントをあげるよ。」

「ヒント…?」

「ヒントは、俺が君をどう思っているか、だよ。」

「私を…?」

 全く見当もつかない。まぁ、嫌な意味ではないことを願いたいけれど。

「わかったら、答えと返事がほしい。いいかい?」

「ええ、わかったわ。」

 そうして、幸村と私は約束をした。




___隠し切れない愛___




その言葉を知るのはもう少し後の話。


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