第1話 いつもの日常

「ちょ〜う〜く〜ん!あっそびーましょ〜!」

 大声で村で1番大きな家に向けて一人の少女が声を出していた。

「ちょ〜う〜く〜ん!あっそびーまじょっ」

「うるさいです、莉奈さん。近所迷惑になるでしょうが。」

「ゴホッゴホ。…、丁君。うるさいからって鳩尾に綺麗に飛び蹴りをする君も君だと思いますけど。」

 家から出てきたのは少女といつも隣にいるとは言えないみずぼらしい風貌をした『丁』と呼ばれた少年だった。

「まぁ、どうでもいいですそんなことは。」

「どうでもいいって…。どうでもよくないと思いますけど…。もしかして、面倒くさくなったとか…。」

「よくわかりましたね。」

 丁は呆れたように腰に手を当てながら言った。

「やっぱり当たってた!?」

「そんなことより、仕事があるんです。遊んでる暇なんかないです。」

 丁は莉奈に持っていた籠を見せた。

「またあのデブチン?よし、この私が手伝って進ぜよう。」

 丁は、

「いいです。遠慮します。」

と、きっぱりと断った。

「ええ〜、何でですか〜…。」

「めんどくさいからです。」

「めっ…、って辛辣ですね…。」

「本当のことです。」

と、丁が言うと莉奈は怒ったように頬を少し膨らませた。

「いいもーんだ。えい!」

「あ!」

 莉奈は丁から洗濯物が入った籠を取り上げて頭の上に乗せた。

「返してくださいよ。」

「や〜なっこた!」

 莉奈は丁より少し背が高いのでなかなか丁には届かない。

「よし、川につくまでに追いついたら返してあげますよ〜!」

「ちょっと!待ってくださいよ!」

 丁の返事を聞かず莉奈は走って行った。

「仕方ないですね…。」

 丁はため息をつきながらも彼女のふざけた言動の裏にある優しさに甘えることにした。

「待ちなさい!莉奈さん!」

「ちょっと!栗、投げないで下さいよ!痛!止めてくださいってば〜!」

 多分、精一杯の甘え、なのだろう。



 …、多分。

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