第1話 出会った瞬間、(恋をする)
「はあ…。」
今日は部活にあまり打ち込めなかった。
夕食もあまり食べれなくて姉さん達に心配させてしまった…。
これは全て昨日の帰り道から始まった。
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「この間、新しいゲーム買ったんすよー。」
部活帰りの他愛ない話、隣で桃達がはしゃいでいる。
並木道が夕焼け色に染まってしまっていた。レギュラーは部活が終わって自主練をしていた。
練習をしているとどうしても時間を忘れてしまう。夢中になっているといつの間にかこんな時間になってしまった。
「うわ、赤だ…。」
交差点の信号は僕達が渡る直前に赤になってしまった。
ドクン…。
何気なく交差点の向こうを見ると青学の制服を着た髪の長い女の子が妹らしき子と笑っていた。
変わりそうな信号みたいなこの気持ち…。あと一歩が踏み出せないような…。一体、何だろう…。
「不二先輩、青になりましたよ〜。」
「あ、ごめん。」
桃が呼んでいたことに気付いていなかった。
いつもはこんな事は無いはずなのに、どうしてだろう…。
少しずつ歩き始めた。少しずつあの子に近づいてきた。
そして、すれ違う…。
風と共に髪が踊っていた…。
未来へと続くかのような道の中で…。僕はこの子に恋をした。
ベタな恋愛小説みたいだけれど、あの笑った顔に恋をしたんだ。
[mokuji]
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