「やだ!絶対行かない!」
「行かないとお菓子食べれなくなるぞ!」
「それもやだ!」
「だったら行け!バカ!」

キバと口喧嘩をしてる理由はかなり下らないこと思う。だけどこれだけは譲れない!

「早く歯医者行け!」
「絶対絶対やだーーー!!」

ワイワイ騒いでたらイノとサクラから怒られた。へこみそうだ…。

「とか言いながら絶対私の立場になったら二人共うるさくなるもん!」
「歯医者如きでそんなぐちぐち言わないわよ!」
「…ぐぐ…」

みんななんて大人なんだ…。

「名前、行くぞ」
「やだよー!キバのあほー!」

ズルズルと引きずられて行く私を何人かは哀れんだ目をしていたことに何故か私は安心した。



「死んだ」

頭からなんか抜けた気がした。ほんと歯医者ってイヤだ…なにがイヤってあの音とか匂いとかだよ…。半泣きの状態でキバのところへ行く。

「偉い、偉い」
「…!」

キバが頭をポンポンっと撫でてくれて顔に熱が集まる。キバは昔からこういうこと普通にするんだよな…、こっちの気も知らずにね!………はぁ…。

「ん?どうかした?」
「別になにも!」
「?…そうだ」
「なにこれ?」

お菓子に決まってんだろっと言って私の手の平に置いてくれるキバに目をキラキラさせながら見ているとふいっと目を反らされた。なんか傷ついたけどそんなことよりお菓子!お菓子!

「えへへ、キバ!ありがとう」
「おう!」

お礼を言ったら私の大好きな笑顔で返事をしてくれたキバに私も目を反らしてしまった。


麻酔が切れるまであと少し