Clap Log
■ 4.逃走

「・・・やっと、捕まえた。」
「もう、ほんと、逃げ足早すぎでしょ。」
息も絶え絶えな二人の男に腕を掴まれる。
「今日こそ、授業に出てもらうぞ。」
「そうそう。君を連れて行かないと、僕らまで担任に怒られちゃうんだから。」


・・・そんなこと、私の知ったことじゃない。
そう思って、するりと彼らの手から逃れる。
「あれ!?ちょっと!?」
「おい!こら、待て!!」
二人の声が聞こえるが、お構いなしで瞬歩を使う。


「・・・あーもう!!これじゃあ、山じいに叱られるじゃないか!」
「彼奴・・・。絶対に捕まえてやるからな・・・。」
どうやら二人も瞬歩を使っているらしい。
二人との距離が離れない。
侮れない奴らだ。


「・・・ぐ、ごほっ。」
白い男が咳き込むと、もう一方は足を止める。
「・・・がはっ。」
血の、におい。
白い男が吐血したようだった。


「うわ、浮竹!?大丈夫かい?」
「す、すまん、京楽。俺は、良いから、早く、あいつを、追え。」
「そんなのは後でいいよ!まったく、無茶するなっていつも言っているのに。」
「げほっ。・・・すまん。」
「いいさ。・・・浮竹が吐血しちゃったー!!逃げ回る君のせいだからねー!!」


・・・私のせい、か?
恐らく私に向けて言われた言葉に、内心で首を傾げる。
傾げながらも、このまま死なれたりしたら後味が悪いと考えて、彼らの前に姿を見せる。
そんな私を見て、二人は目を丸くした。


『・・・肺が弱いのか。』
「あぁ・・・。」
『・・・いや、違うな。肺に何か居るのか。厄介なものを飼っているな。霊王の腕を持つとは、運がいいのか、悪いのか。』
呟けば、彼らの目がさらに見開かれる。
気にせず白い男の胸に手を当てて、霊圧を送り込んだ。


『霊王の右腕よ、鎮まり給え。この者を喰らえば、宿主を失うぞ。我が霊圧で鎮まり給え。』
指先から淡い光が漏れだす。
『・・・霊王様。後でこの巫女が貴方様のために舞いまする。己が右腕をお鎮めください。』
「お前・・・。」


『痛みは引いたか。』
「あ、あぁ・・・。」
『そうか。・・・その肺に飼っているものに異変を感じたら、私に知らせろ。』
「え・・・?」
『・・・我が家の使命は、あの方を楽しませ、心を穏やかにして頂くことなのだ。』


「・・・へぇ。興味深いね。君が家のことを語るのは初めてじゃないかい?」
『あの方が関わる相手ならば別だ。』
「そ。じゃあ、もっと話を聞かせてもらえない?」
捕まえようとしてくる男をするりと躱して、距離を取る。
『・・・深入りするな。』


「そりゃ残念。・・・さて、浮竹。体の調子はどうだい?」
「・・・あぁ。元通り、だな。」
「ふぅん?じゃあ、続きと行こうか。」
「そうだな。」
二人の視線が向けられて、反射的に腰を低くする。


「「早く、捕まれ!!」」
同時に二人が瞬歩で近づいてきて、内心でため息を吐く。
『・・・お前ら程度に、捕まるものか。』
小さな呟きと同時に、姿を消す。
今度は霊圧まで消して。


「「・・・また逃げられた!!」」
二人の声が木霊するが気にしないことにした。
いつものように塀の扉を開けて、霊術院の外に出る。
護廷隊に足を向けようとして、先ほど霊王に舞を見せると約束したことを思い出した。


仕方なく近くの神社に足を向ける。
神社に人気がないことを確認して、いつものように一歩を踏み出す。
そしてそのまま舞に集中したのだった。

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