Clap Log
■ お相手は吉良くん


『えへへ。イヅルくんだぁ・・・。』
赤い顔をしてふわふわと笑うのは、同期であり部下。
そして僕の恋人。
彼女に酒を呑ませるなとあれほど言ったのに、と阿散井君をじろりと睨めば、すぐに目を逸らされた。


久しぶりの同窓会。
仕事をしない隊長の分まで熟してから大急ぎでやって来たのに、彼女はすでに出来上がっているらしい。
いつも他人の前では僕のことを名字で呼ぶ彼女が、僕の名前を呼んでいるのがいい証拠だ。


「・・・阿散井君。」
「お、おう、吉良。遅かったな。お前も呑むか?」
ぎくしゃくとしながら差し出された盃を受け取れば、どこか安心したような顔をして酒を注がれた。


僕が断るとでも思ったのだろうか。
ほろ酔いであろう赤髪の同期をちらりと横目で見ながら酒を呑む。
あまり強くはない自覚はあるし、疲れで酔いが回るのが早そうだ、と二杯目は断ったけれど。


『イヅルくん、あのね、私、ルキアちゃんと、お話が出来たの!』
嬉しげに話す彼女の横で、これまたほろ酔いであろう朽木さんが恥ずかしそうに笑う。
「そう。良かったね。君はずっと朽木さんのことを気にしていたから。」
『うん!』


「朽木さんもありがとう。彼女の相手をしてくれて。」
「礼を言うのは私の方だ。同窓会に呼ばれたときはどうしようかと思ったのだが、来て良かった。」
穏やかな顔をする朽木さんに軽く笑えば彼女が頬を膨らませる。


『イヅルくん、笑っちゃだめだよ!』
「どうして?」
『だって・・・。』
口籠った彼女に首を傾げれば、彼女は唇を尖らせる。


『・・・だって、イヅルくんの笑った顔を見るのは、私だけでいいもん。だから、他の人に見せちゃだめなんだもん。』
まるで子どもだ。
けれど、なんて可愛い我儘なんだろう。


「じゃあ君は、僕以外の前で酔っぱらうの禁止ね。」
『どうして?』
「隙がありすぎるから。・・・ほら、帰るよ。明日は久しぶりの非番なんだから、二日酔いで潰したくはないだろう?」


『イヅルくん、話を逸らした・・・。』
「酔っ払いのくせに鋭いよねぇ、君は。」
納得がいかない様子の彼女に手を差し出せば、反射的に彼女の手が伸びてきて。
その手を掴んで立ち上がると、酔いが回ったらしい彼女は足に力が入らないらしい。


「お・・・っと。全く、本当に呑みすぎだよ。」
『自分で歩けるもん!まだ平気だもん!』
抱えて帰った方が早いと彼女を抱え上げれば、腕の中から抗議の声が上がる。
「はいはい。抗議は帰ってから聞くから、大人しくしなさい。」


『もう・・・。イヅルくんの意地悪。』
「意地悪で結構。・・・それじゃ、悪いけど、彼女は連れて帰るよ。」
「おい、吉良。お前、来たばっかりじゃねぇか。せっかくの同窓会なんだぜ?」
絡んでくる赤髪の友人をちらりと睨めば、怖ぇよ、なんて言われたけれど。


「これ以上、こんな彼女の姿を君たちに見せるのは勿体ない。今日のところは帰らせてもらうよ。明日非番なのは、彼女だけじゃないからね。」
「惚気かよ。」


「別に良いだろう。だって彼女は、僕のものなんだから。」
それだけ言って、部屋を出る。
腕の中の彼女は眠気がやって来たらしく先ほどとは打って変わって静かだ。
そんな彼女に小さく笑って、歩を進めるのだった。



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