Clap Log
■ お相手は浮竹さん


『・・・ふふ。皆子どもみたいにはしゃいじゃって。』
夏と言えば花火でしょう!
誰かがそんなことを言って始まった、十三番隊舎での花火。
始めは酒を片手に楽し気な若者たちを眺めていた年長者たちも、いつの間にか花火を手にして騒がしい。


「隣、いいか?」
先ほどまで花火を片手にしていたはずなのに、どこからか酒を持ってきたらしい。
その手には、何だか高そうな気配のする酒瓶と、見事な切子が一つ。
良く冷やされているであろうそれは、花火が始まる前に準備をしていたに違いない。


『もちろんですよ、浮竹隊長。』
頷きを返せば、酔ってご機嫌らしい彼は、鼻歌でも歌いそうな表情で嬉々として酒を切子にそそぐ。
芳しい酒の香りが、ふわり、と広がった。


「ほら。」
差し出された切子を遠慮なく受け取って、一口。
極上の酒が、喉を通り過ぎる。
芳醇な香りが、鼻腔を通り抜ける。


『甘露・・・。』
「だろう?俺のとっておきだ。」
悪戯に微笑む隊長は、どこか少年のようで。
とろりとした瞳が何だか愛らしい。


「お前に呑んでもらおうと、こっそり持ってきたんだ。」
『浮竹隊長のとっておきを、私に?』
「あぁ。お前のために用意した。」
本気か冗談か解らない言葉に曖昧に微笑めば、隊長は私の手の中の切子をするりと奪って、残りの酒を一口で呑み込んだ。


「何度口にしても、美味いな。」
『呑み過ぎは、禁物ですよ。』
「はは。そこまで弱くないさ。これでも、京楽に付き合えるくらいには、呑めるんだぞ?」


『でもそろそろ瞼が重くなってきたのでは?』
「大丈夫だ。まだ眠くないぞ。」
・・・楽しい時間が惜しくて、眠たくても眠らない子どものようね。
とろん、としてきた隊長の瞳にくすくすと笑えば、彼は小さく唇を尖らせる。


「俺はまだ、眠くない。」
『そういうことにしておきましょう。』
くすくすと笑っていると、笑うなよ、なんて拗ねた声で言うものだから更におかしくなって。


『ふふ。楽しい夜ですねぇ。』
「・・・お前が楽しいなら、良かった。1人で居るから、こういう騒がしいのは嫌いなのかと思った・・・。」
もう一度、よかった、と呟いた隊長の頭が、ゆっくりとこちらに傾いてくる。
とん、と私の肩にその頭が届く頃にはすやすやと寝息が聞こえてきた。


『本当に子どもみたいね。』
笑いながら隊長の手から切子を取り上げて、床に置く。
『お疲れ様です、浮竹隊長。』
小さく呟きを落として隊長の髪を撫でれば気持ちよさそうな顔になって、再び笑ってしまうのだった。



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