Clap Log
■ 9.護廷隊見学

「あの子、護廷隊の見学にすら出席しないとはね・・・。」
「彼奴は本当に死神になる気があるのかどうか・・・。」
京楽と浮竹はそういって溜め息を吐く。
「これだけ授業に居ないと、あの子を頼むと言われても、どうしようもないよねぇ。」
「そうだな・・・。彼奴は一体何時もどこに雲隠れしているのやら・・・。」
いい加減、彼女を探すのも惰性になってきた、と、二人は内心で呟く。


「彼女、寮生でもないみたいだし。」
「そうらしいな。だが、あの感じだと、自分の邸に帰っている感じでもない。」
「でも、そうなると後は・・・。」
「・・・朽木家、だろうな。」
朽木家が彼女を匿っているのならば、俺たちではどうしようもない、と浮竹は思う。


「京楽家でも、彼奴の家については解らないのか?」
「うーん・・・。兄さんに聞いてはみたんだけどねぇ。やっぱり解らないみたい。伊勢家の巫女とは別物らしいし。」
「そうか。・・・やっぱり、待つしかないかぁ。」
「待っても話してくれるかどうか・・・。」
二人は再び溜め息を吐く。


『・・・この六番隊でため息を吐くとはいい度胸だな。』
後ろから聞こえてきた冷たい声に、二人はびくりと飛び上がる。
恐る恐る振り向けば、先ほどから話題の中心になっている人物が冷ややかに二人を見つめていた。
彼女の隣には苦笑している蒼純の姿もある。


「いや、あの、それは、大変、失礼を・・・。」
「決して、六番隊に対してため息を吐いたわけでは・・・。」
その冷ややかな視線に、二人は助けを求めるように蒼純を見る。
そんな二人に苦笑を返して、蒼純は口を開いた。


「解っていますよ。・・・ほら、君はそんな目で彼らを見ない。」
蒼純に窘められた彼女は、不満げな瞳をした。
『ですが、ここは、蒼純様や銀嶺お爺様の隊です。』
「彼らは六番隊に対してため息を吐いたわけではないと言っているだろう。」
『それはそうですが・・・。』


「全く、困った子だなぁ、君は。・・・今日は護廷隊の見学でしたね。ようこそ、六番隊へ。」
拗ねた様子の彼女に苦笑して、蒼純は二人を見る。
「毎日この子を見つけ出そうと躍起になっているとお聞きしました。この子、なかなか見つからないでしょう?」


「・・・はい。学院中を探し回っても、見つかりません。」
「蒼純殿は、彼女の居場所に心当たりがおありですか?」
京楽に問われて、蒼純は微笑む。
「心当たりなどなくとも、この子を見つけるのは簡単です。昔から、隠れたこの子を探すのは私の役目でしたから。」


蒼純の答えに、二人は首を傾げる。
見つけるのが簡単とは、どういうことだろう?
彼女が霊圧を消して姿が見えないように結界を張ってしまうと、自分たちでは探しようがないというのに。
二人の心の声が聞こえたように蒼純が笑う。


「ふふ。だって、この子はキラキラしているから。霊圧を消しても、姿を消しても。この子が通った場所は、いつも光の欠片が落ちている。それを辿れば、その先にこの子がいるのです。」
可笑しそうに言われて、二人はさらに首を傾げる。
ちらりと見た彼女も、首を傾げているようだった。


「まぁ、父上にも、この子自身にも、それは見えないようだけれど。・・・おっと、私はそろそろ任務に出かける時間だ。」
『では、お見送りを・・・。』
ついていこうとした彼女を、蒼純が制す。


「いいさ。君は、彼らと共に護廷隊の見学をしてきなさい。」
『その必要はないかと思います。』
「いいから。たまには六番隊以外を見てくるといい。・・・二人とも、この子をお願いしますね。では、また。」
去っていく姿を二人は不思議そうに、彼女は恨めし気に見つめるのだった。


キラキラしている、ねぇ?
京楽は内心で呟いて彼女を見る。
その空色の瞳は透き通るように美しく、その顔は自分が今まで見てきたどの顔よりも美しい。
これまでも、これからも、彼女以上に美しい人を見ることはないだろうと思うほどに。


だが、蒼純の言うキラキラは見えない。
朽木蒼純という男は、一体何を見ているのだろうか。
体が弱いという話も聞くし、死神としての才は朽木家の中では凡庸らしい。
朽木家の次期当主としての器量もまあまあ。


・・・でも、何も見えていないというわけではないみたいだ。
むしろ、見えすぎているのかもしれない。
彼女を見つめるその瞳は、小さな諦めを含んでいる。
彼の存在を超える何かが必要なのだ・・・。
京楽の第六感がそう訴えるのだった。


「・・・京楽?どうした?もう行くぞ。」
浮竹に声を掛けられて、自分が考え込んでいたことに気が付く。
見れば、彼女は不本意そうに僕らの先を歩いている。
山じいの言うことすら碌に聞かないのに、蒼純の言いつけをちゃんと守る彼女におかしくなった。


「何を笑っているんだ?」
「あはは。いや。なんていうか、待つしかないんだねぇ、僕らは。」
首を傾げた浮竹の肩を叩いて歩を進める。
思いついた彼女のあだ名を口にして、彼女の肩を叩けば、すごく嫌な顔をされた。

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