色彩
■ 12.隊長格たちの見本

「さぁて、みんなちゃんとお昼は食べたかな?早速午後の講義を始めるよ。まずは斬術だね。」
昼休憩を終えて、再び講義が始まった。
午前中にやり残した斬術のために、院生たちは斬魄刀を手にしている。


「誰が見本を見せるんだ?」
「そうだねぇ・・・じゃあ、僕と浮竹でやろうか。」
「俺とお前で?」
浮竹は意外そうな顔をした。


「ほう?漸くやる気を出したか、京楽。」
「あはは。ほら、いいところ見せないとね。」
「京楽とやるなんて、久しぶりだなぁ。」
「そうだね。ま、怪我しない程度にやろうよ。」
「あぁ。」


浮竹と京楽は木刀を構えて向きあう。
「この光景を見るのは久しぶりだな。昔は毎日見ていたというのに。」
「あはは。よし、じゃあ、やるかぁ、浮竹。」
「おう。」
「じゃ、始め!」


咲夜の掛け声で二人は同時に地面を蹴った。
といっても、見本なので院生に見えるように普段よりは数段遅いが。
カン!と小気味良い音が鳴り響く。
その後も止まることなく、攻防が繰り返される。
二人は楽しそうだが、その光景と迫力に、咲夜以外の全員がその戦いに目を見開いた。
咲夜はいつものように楽しげに二人を見つめている。


『さすがに、隊長同士は凄いね。僕もあの二人が打ち合っているのは初めて見たよ。』
「えぇ。あんなに楽しそうなのに、この迫力なのね。」
『うん。実際に隊長たちに向き合うと、もっと迫力があるように感じるけどね。』
青藍はそう言って二人を見つめる。
「お母上はあれより凄いの?」


『いや、見た目的には、こっちの方が迫力はあるかな。母上は舞うように戦うから、すごく軽く見えるんだ。白打も斬術も。実際はとんでもない力が出ているんだけど。だから、母上の強さは母上と戦った人しか解らない。』
「ぜひ見てみたいわね。」
『ふふふ。見てなよ。そのうち母上が乱入するからさ。』
青藍は咲夜の様子を見てたのしげに言った。


「・・・駄目だ!楽しそう!私も参加する!!」
咲夜はそう言って木刀を掴むと、戦う二人の間に滑り込んだ。
「漣!?」
「咲ちゃん!?」
「ふふふ。ここからは三つ巴といこうじゃないか。」
「ははは。漣の独壇場の間違いだろう。」


「ふふ。二人ともまとめて相手をしてやろう。」
「全く、それが咲ちゃん、だよね!」
京楽はそういって咲夜に木刀を振り下ろす。
が、咲夜はそれを簡単に受け止めた。
そして、今度は三人での攻防が始まる。


『ほら、ね。』
乱入した咲夜を見て、青藍は得意げに言った。
「・・・とても楽しそうね。」
『あはは。まぁ、あの三人にとっては遊びだからね。無駄な力を使わずに駆け引きだけで戦っている。互いに相手の癖や動きを熟知しているから、相手の行動を読めなかった方が負ける。』
青藍がそう言った瞬間、浮竹の手から木刀が弾かれる。


「・・・降参だ。」
浮竹はそう言って離脱した。
『さて、ここからが面白いよ。母上と春水殿は相手を読むのが得意だからね。十四郎殿もそれは得意なんだけど、あの二人の方が上なんだ。』
「そうみたいね。浮竹隊長はあの二人と比べて真っ直ぐだもの。」
『そうそう。母上も春水殿もひねくれているから。』


「ふふふ。さすが京楽。やるなぁ。」
「咲ちゃんこそ。」
互いに口角を上げながら言った。
「昔から、京楽はもっとも効率の良い方法で敵を倒すものね。多少ずるい手段でも。」
「あはは。」


「君は一見適当な性格だが、それはすべて計算で常に人を見ている。大切なものを守るためなら手段は選ばないし、その他のものを切り捨てることもする。浮竹は反対だ。浮竹はすべてを守ろうとする。最後まで切り捨てることはしない。それなのに、君たちは一緒に居る。だから私は、君たちが面白くて仕方がないのだ。」


「あはは。よく解っているじゃない。」
なおも打ち合いながら会話を続ける。
「何年一緒に居ると思っているのだ。それに、私も人を見るのは好きなのだよ。隊長として浮竹の寛容さも大切だが、君の残酷さも大切だ。私にはそれがない。」


「咲ちゃんは咲ちゃんだからいいのさ。それが咲ちゃんのいいところだよ。」
京楽は笑う。
「ふふ。そう言ってもらえると、嬉しいなぁ。・・・だが、そう褒めても手は抜かんぞ。」
咲夜は悪戯っぽく笑った。


「あらら。それは残念。」
「さて、そろそろ終わりにするか。」
「いいよ。じゃ、最後の一手をどちらか読み切るか、賭けようじゃないの。」
「ふふ。勝つのは私だよ。」
「咲ちゃんが負けたら、僕の仕事代わりにやってね。」
「いいぞ。一週間分引き受けてやろう。そのかわり、私が勝ったら一週間机に縛り付けてやるからな。」


「それは本気でいかないとね。・・・いくよ。」
「あぁ。」
二人は距離を取って一瞬動きを止める。
そして、同時に地面を蹴った。
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