色彩
■ 10.白打は遠慮したい

「待て!恋次!」
「誰が待つかよ。」
咲夜たちが到着したころ、恋次とルキアはゴール前で競っていた。
「くそう・・・。あ!兄様!」
「何!?」
恋次はそう言ってあたりを見回す。


「・・・嘘に決まっておるだろう。」
ルキアはその隙に恋次を抜き去った。
「てめ!ルキア!!」


「阿散井くん、僕もお先。」
「お先に失礼します。」
「あたしもお先。」
続いてイヅル、七緒、乱菊にも抜かれる。
「くそ!待て!!」
恋次はそう言って彼らを追いかけた。


「あはは。恋次が最後だね。」
息を切らせた恋次に咲夜が笑って言った。
「ほう?眉毛副隊長は最後か。」
ルキアがニヤニヤといった。
「そうみたいね。じゃあ、恋次に奢ってもらいましょうか。」
「そうですね。」


「奢る!?いや待て、ルキア、さっきのはずるいだろ!」
「私は兄様、といっただけだ。そうしたら貴様が勝手に足を止めたのだろう。」
「そうよ、恋次。男なんだから潔く負けを認めなさい。そしたら、あたしが慰めてあげる。もちろん、恋次の奢りでね。」


「そうですね。それなら私も参加しましょう。」
「阿散井君、僕も参加するよ。」
「吉良まで・・・。」
恋次はそう言って肩を落としたのだった。


「さてさて、じゃあ、それぞれの瞬歩のやり方を教えてあげてね。じゃあ、咲ちゃんから。」
「私?瞬歩ってどうやって覚えたのだろうか・・・。何かこう、指導された記憶もあるような気もするが・・・。」
咲夜は思い出そうとする。


「・・・解らん。」
「それはどうなんだ・・・。」
「ちょっと咲ちゃん、真面目に答えようよ・・・。」
咲夜の答えに浮竹と京楽は呆れたように言った。


「瞬歩を覚えたのは何時だと思っているのだ。そんな大昔のことなど忘れた。大体、気が付いたら出来ただろう?」
咲夜は当然のように言う。
「「まさか。」」
二人はあり得ないといった表情でいった。


「え?みんな違うの?」
そんな二人の様子に咲夜は首を傾げる。
「俺たちは一から十まで先生に仕込まれたぞ。」
「そうそう。違う!!とか言って棒で叩かれながらね・・・。」
「いや、それはお前だけだろう。」
「そうなの?覚えてないなぁ。いつから出来たのかもよく解らないし。」


「・・・うん。咲ちゃんに聞いた僕が間違っていたよ。」
「・・・そうだな。よし。次に行こうか。」
「そうだね。じゃあ・・・阿散井君。」
「俺すか?俺は・・・こう、足の裏に力をためる感じっすかね。」
「あたしもそんな感じ!結構適当よ、瞬歩なんて。吉良は?」


「僕ですか?僕は霊術院で習ったそのままで出来ましたけど。足に霊力を流して見えない壁を蹴るようにと。」
「私もです。」
「私も。」
イヅルの言葉にルキアと七緒が同意する。


「へぇ、霊術院ではそんな教え方をするのか。」
咲夜は珍しそうに言った。
「咲夜さんの時代でもそう教えていたはずですが。」
「あはは。それはほら、私、ほとんど授業に出ていないから。」
「つか、咲夜さん、霊術院の先生だったじゃないすか。」
「そうだけど、私は鬼道と斬術しか教えていない。」


「「「・・・確かに。」」」
「だろう?で?山じいに教わった瞬歩のやり方はどうやるのだ?」
「えっと、鬼道を放つときみたいに、霊力を足の裏に込めるんだ。」
「それから、その霊力を足で踏みつぶすようにする。」
「で、その霊力が爆発したことを想像して蹴る。そうすると、瞬歩が出来る。」


「こんな感じだったな。」
「・・・面倒な教え方だな。」
「そういうなよ。」
浮竹が苦笑する。
「でも僕ら、これで出来るようになったんだよ。」
「まぁ、これは感覚の問題だからな。自分で想像しやすい方法でやった方がいいかもしれんな。」
「そうだね。じゃあ、歩法は終わり!」


「次は、白打か?」
「そうだね。・・・この中で白打に自信がある人はいるかい?」
「あんまり使わないのよねぇ。」
「私もあまり・・・。」
「僕も自信があるというほどでは・・・。」
「私もです。」
「俺もあんまり使わないっす。」


「・・・じゃあ、浮竹が咲ちゃんの相手してね。」
「・・・俺よりお前の方がいいと思うぞ。」
「「・・・。」」
二人は無言で見つめ合う。


「ほう?そんなに私とやるのが嫌か?別に二人で相手をしてもいいぞ?」
咲夜はそう言ってニヤリと笑う。
「・・・浮竹。」
「・・・なんだ京楽。」
「僕ら、寿命が縮んじゃうよね。」
「そうだな・・・。」


「「という訳で俺(僕)たちは遠慮する(よ)。」」
「へぇ?君たち、後で覚えておけよ。たっぷりといじめてやる。」
「「はは・・・。」」
咲夜の言葉に二人は引き攣った笑みを浮かべる。
「・・・この二人たまに頭が悪いのではないかと思います。」
「あはは。伊勢副隊長・・・。」
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