色彩
■ 6.呼び出し

翌日。
青藍は雪乃と共に担任に呼び出されていた。
・・・昨日のことだろうなぁ。
勝手に行動したこと、怒られるのだろうか・・・。
憂鬱な気分になりながら、青藍は担任の元へと向かう。


『失礼します。』
「失礼いたします。」
「おぉ、来たか。」
担任は二人の顔を見ると、嬉しそうな表情になった。


『何かご用でしょうか?』
「昨日の件でな。少し話がある。」
「何でしょう?」
「京楽隊長が君たちのことを大変褒めていてね。特別に我がクラスの講師を引き受けてくださったのだ。それも、副隊長クラスを数人連れてきてくれるそうだ。」


春水殿は一体何を考えているのやら。
・・・まぁ、面白がっているのだろう。
それにしても、副隊長クラス、ねぇ?
「副隊長」ではなくて「副隊長クラス」っていうのがなんだか怪しい・・・。


「本当ですか!?」
青藍の心配をよそに、雪乃は瞳を輝かせた。
「あぁ。それで、ぜひ君たちに案内を頼みたいとおっしゃっていてね。」
『・・・わかりました。いついらっしゃるのですか?』


「特別講義は三日後だ。丸一日かけてやってくれるそうだから、京楽隊長たちに一日中付き添っていてくれ。」
『はい。そのように。』
「頼んだぞ。」
『「はい。」』


「特別授業、楽しみね。」
教室へ戻りながら雪乃が言った。
『うん。それはいいんだけどね・・・。』
「?どうしたの?」
青藍の歯切れの悪い様子に雪乃は首を傾げる。


『・・・なんか、怪しいんだよなぁ。』
「そう?良かったじゃない。丸一日特別授業なんて、そうは出来ないことよ?」
『うん・・・。』
「何が気になるのよ。」
『「副隊長」ではなく「副隊長クラス」っていうのが気になるよね。一体誰が来るのだか・・・。』


「まぁ、確かにそうね。・・・もしかしてお母上がきたりするの?」
『あはは。その可能性は否定できないよね。副隊長はそれなりに忙しいはずだから。ルキア姉さまなんて十四郎殿が寝込んでいるとそれはそれは忙しいんだ。そういう時は母上もちゃんと仕事をしているのだけれど。』


「そうね。忙しい副隊長を何人も一日中連れだすことなんてできるのかしら?」
『うん。たぶんそれは難しいよね。それも三日後っていう急な日程だし。まぁ、仕事を放ってやってきてしまいそうな心当たりもなくはないんだけど。』
乱菊さんとかね。
そして修兵さんや恋次さん、イヅルさんがそれに巻き込まれる。
そんなことを考えて、青藍はあり得そうで怖くなる。


「でもきっと、伊勢副隊長はいらっしゃるわね。京楽隊長の目付け役として。」
『あはは。そうだね。ま、考えても仕方がないか。』
「そうね。三日後が楽しみだわ。」


三日後。
隊長がやってくるという特進クラスは他の学年や他のクラスからの見物人で廊下が一杯になっていた。
「なぁ、今日来る隊長って、この間応援に来た隊長だろ?」


「そうだね。八番隊隊長、京楽春水。この霊術院を卒業した者のなかで初めて隊長になった人だ。隊長歴も数百年で総隊長、卯ノ花隊長に次いで長い。十三番隊隊長、浮竹十四郎と朽木咲夜さんとは同期。師は総隊長で、学院時代から三人はとても強かったらしい。酒と女性に弱い。が、軽薄な振る舞いとは反対に鋭い観察眼を持ち、臨機応変な対応に長けている。」


「京、調べたの?」
「まぁね。」
「で?なんで青藍はそんなに憂鬱な顔してんの?」
侑李は怪訝そうに青藍を見る。


『絶対何か企んでいるんだ。母上に聞いても何も教えてくれなかったもの。絶対にろくなことがない気がする。あの二人が組むとすごく厄介なんだよ・・・。』
青藍はそう言って机に突っ伏した。
「そんなに?」
『・・・うん。十四郎殿でも止められないくらい。』
「それは・・・大変そうね。」


『十四郎殿が来る可能性がとても低いってことは、あの二人のストッパーが居ないってことだ。そしてここは霊術院。先生たちも隊長には逆らえない。あの二人相手じゃ、睦月も太刀打ちできない。つまり、何かが起こる。父上でも居てくれれば、少なくとも母上の暴走は止められるんだけどなぁ。』
言いながら青藍は盛大なため息を吐く。


『・・・そうか。何かあったら父上を呼べばいいのか!よし。そうしよう。』
いいことを思いついたというようにガバリと起きあがった青藍の言葉に、皆がそんな状況を想像してしまった。
「青藍・・・。君もいろいろ大変なんだね。」
青藍の様子に、何事もないといいなぁ、と京は苦笑するのだった。


そんな話をしていると、廊下がざわめいた。
「来たみたいよ。」
『そうだね・・・。』
「ま、俺らは普通に楽しみだな。」
「そうだね。」


「あの青藍が何もできないってことは、僕らじゃ見ていることしか出来ないからね。」
「そうね。」
『皆して他人事なんだから。大体、雪乃は僕と一緒に一日中春水殿たちのそばに居るんだからね。何かあったら、君も被害に遭うんだからね。』
「あら、大丈夫よ。私、逃げ足は速いもの。」
『・・・裏切り者。』
「何とでも言いなさい。」
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