色彩
■ 4.鳴神

『さて、と・・・。』
青藍はすらりと斬魄刀を鞘から抜く。
『ふぅ。』
深呼吸をしてから、解号を叫んだ。


『火、天に集いて、水、地に集い、雷、天地を結びて裁きを下す・・・鳴神!!!』
青藍の斬魄刀が解放される。
それと同時に霊圧が吹き出し、青藍の周りを強い風が吹き荒れ、空気の摩擦でビリビリと電流が流れるほどだ。
そして空は雲で覆われ始めた。


天相従臨。
鳴神は氷輪丸と同じ基本能力を持つ。
解放された斬魄刀は刀身が消え、青藍の手には柄と鍔があるだけである。
青藍が確かめるように軽く一振りすると、稲妻が奔った。


『さて、このくらいでいいかな。そろそろ縛道が解けてしまう。』
青藍はそう言って虚をひたと見つめた。
そして、瞬歩で虚に近付くと、斬魄刀を振るう。
そのたびに虚には傷が増えていくが、まだ致命傷にはならない。


『もう、何でこんな無駄に大きい上に硬いの・・・。霊圧を上げれば斬れるだろうけど、それじゃあ、この雷が僕のだってばれてしまうしなぁ。』
青藍は嫌になりながらも斬り続ける。
すると、縛道が解けてしまい、虚が動き出す。


『あーもう!面倒くさいなぁ。』
そう叫んだ青藍は虚から距離を取った。
そして、斬魄刀を大きく振り上げる。
虚の上に雲が集まり始めた。


『一の裁き、春雷。』
空から一直線に雷が落ち、虚の全身を貫く。
虚は悲鳴を上げ、あたりには轟音が響き渡った。
雷に貫かれた虚は仮面が割れ、サラサラと消えていく。


『これで良し。』
青藍はそう言って刀を一振りすると、始解を解いて鞘へとしまう。
蓮たちの方も、蓮が仕留めたようだ。
『・・・あっちももう大丈夫みたいだ。僕の斬魄刀、結構便利なんだけど、目立つんだよなぁ。』
青藍はそんなことを呟きながら、皆の元へ向かう。


『先輩方、終わりましたよ。』
青藍がそういうと、結界の中が見えるようになる。
「大丈夫かい・・・って無傷じゃないか。」
『あはは。はい。』
「・・・七割とか言ったの、嘘だろ。早すぎる。」
千景は疑いの目を向ける。


『あはは。本当ですってば。』
「まぁ、いい。向こうは応援が来たようだな。」
『そうですね。・・・けが人は?』
「雪乃が手当てをしてくれている。それほど重傷な人は居ないようだ。」
『そうですか。じゃあ僕も手伝います。結界も、もう解いて大丈夫でしょう。』


「「「青藍!!」」」
結界が解かれると、侑李、京、キリトの三人が駆け寄ってきた。
『皆、無事で何より。』
「それはこっちの科白だよ!!!」
キリトは涙目になっている。


「なんで無傷なの・・・。僕らの心配は何だったのさ。」
京は呆れたように言った。
「まぁ、青藍だから仕方ないんじゃねぇ?つか、お前どうやって倒したの?結界の中からじゃ見えなかったんだけど。霊圧もそんなにあげてなかっただろ?」
『あはは。頑張って戦いました。』


「・・・誤魔化すなよ。」
『あは。とりあえず、僕は雪乃の手伝いをしてくるよ。』
青藍はそう言って雪乃の方へ向かった。
「逃げた・・・。」
「逃げたな・・・。」
「逃げたね・・・。」
三人はそう言って背中を向けた青藍をじとりと見つめる。


「でもやっぱり、青藍ってすごく強いんだね・・・。」
「ほんと、何者だよ・・・。」
「これでまた青藍のファンが増えるね。」
「「「はぁ。」」」
青藍のお蔭で苦労が絶えない三人なのであった。


『雪乃。手伝うよ。』
「青藍!無事だったのね。」
青藍をみた雪乃は安心したような顔になった。
『まぁね。僕は何をすればいい?』
「じゃあ、あっちの人をお願い。やり方は勿論、解っているわよね?」


『あはは。うん。仕込まれているからね。』
「そう。じゃあ任せるわ。」
『了解。』
青藍はすぐに治療に取り掛かった。


「・・・終わったの、ですか?」
負傷した死神が話しかけてくる。
『終わりましたよ。院生には負傷者は一人もいません。死神の方々もみんな無事です。』
「そうですか。・・・良かった。」


『応援が来てくれましたからね。どこか痛いところは?』
「左足が、折れているようで・・・。」
そう言われて、青藍は左足の様子を見る。
確かに足が曲がり、赤く腫れている。


『・・・そうですね。僕では痛みを抑えるくらいしかできませんが、手当をさせて頂きます。』
「すまない。院生に助けられるとは。」
『ふふ。死神の皆さんがいらっしゃらなければ、僕らは無傷で帰ることなどできませんでした。これはそのお礼です。』
「・・・ありがとう。」
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