色彩
■ 灰色C

「私に君の話を聞くメリットはない。」
『ありますよ。』
青藍は自信ありげに言う。
「ほう?」


『貴方が変えられなかった世界を僕が変えていく様を、間近で見ることが出来ます。僕は、貴方と違う方法で、世界を変えて見せましょう。貴方は退屈する暇もない。』
「・・・厄介な男だ。」
『ふふ。よく言われます。』


本当に、厄介だ。
相手の欲しいものを目の前にちらつかせて、誘い込む。
手に入らないものほど、どうにかして手に入れようと貪欲になる。
この男は、それを解って私に会いに来たのだ。
私が自分の提案に頷くことを解っているのだ。


「・・・はぁ。」
藍染は思わずため息を吐く。
『えぇ・・・。何で溜め息・・・。』
「・・・好きにしたまえ、朽木青藍。」
『本当ですか!?やったぁ!じゃあ、遠慮なく来ますね!』
瞳を輝かせた青藍に、いや遠慮はしてくれ、と藍染は思う。


「・・・青藍様。見つけましたよ。」
そんなとき、そんな声とともに、青藍の後ろに影が降りてくる。
『やぁ、睦月。思った以上に早かったね。』
「どこかの主がわざわざこの私を遠くにやったのですから、隠れて何かしようとしていることなどすぐに解ります。やはりここでしたか。」


『あはは。こちらの話はもう終わった。』
「では、帰りますよ。・・・うちの主がお騒がせいたしました、藍染惣右介。」
睦月はそう言って軽く頭を下げる。


「構わないよ、草薙睦月。久しぶり、と言った方がいいかな。」
「えぇ。貴方が霊術院で講師をなさった時以来ですね。お久しぶりにございます。」
にっこりと微笑んだ睦月に、藍染は冷たい一瞥をくれる。


「私が気に入らないのは解りますけどね。そうあからさまに嫌わないで頂けると。」
そんな藍染に睦月は呆れたように言う。
「まるで私の顔が見えているようだね。」
「さて。私は人の顔など見なくとも表情が解りますので。」


「流石「草薙」の「睦月」といっておこう。」
「お褒め頂きありがとうございます。」
そのやり取りを、青藍はじっと見つめる。
それに気が付いた睦月は、青藍の方を見た。


「如何いたしましたか、青藍様?」
『うん・・・。睦月、それ、もういいよ。』
「そうだろうな。で、何だ?」
『・・・仲良しだなぁ、と、思って。』


「「は・・・?」」
思わず出た声が被って、藍染と睦月は居心地が悪そうにする。
『お互いにお互いをよく知っている感じだ。』
「そんなわけあるか。昔から馬が合わないだけだ。俺は胡散臭い奴が嫌いなんだよ。」
「君に言われたくないね。胡散臭いのは君も同じだろう。」


『やっぱり仲良し。』
「「違う。」」
またもや声が被って、二人は小さく舌打ちする。
『ふふ。似た者同士なんだねぇ。』
「「そもそもお前(君)が一番胡散臭い。」」


『あはは。否定はしません。・・・まぁ、今日の所は帰ろうか。では、また来ますね、「惣右介さん」。』
青藍は笑いながら、踵を返す。
青藍の言葉に、睦月と藍染は唖然とした。


「・・・惣右介さん!?おい、青藍!?お前、一体何をした!?何を話した!?つか、また来るのか!?」
我に返った睦月は言いながら青藍を追いかける。
『うん。来るよ。』


「ここが何処だか解った上で言ってんだよな!?」
『もちろん。ここは無間。大罪人がうじゃうじゃいる。』
「ついでにここに勝手に出入りするだけでも大罪だぞ!?」
『あはは。その辺はもう睦月が共犯だし。喜助さんもお手伝いしてくれているし。』
「何で、浦原さんが協力してんだよ・・・。」
笑いながら言う青藍に、睦月は疲れたように言う。


『まぁ、色々と。他の人は駄目でも、僕ならばいいと、思っているのだろう。僕のこの身と立場は、利用しやすいからね。』
「お前、それが危険なことだと解ってんだろうな?お前が利用されれば、世界が揺れるぞ。」


『承知の上さ。喜助さんは悪い人ではないけれど、怖い人だからね。僕をここに来させたのも、意図があってのことだろう。』
「意図・・・?」
『うん。例えば、僕ならば藍染惣右介を含めた無間の住民を殺せるかもしれない、とかね。』
青藍の言葉に睦月は言葉に詰まって、それからため息を吐く。


「咲夜さんはともかく、白哉さんに見つかったら大事だぞ?」
『父上は、見守るだけだと思うよ。』
「それはそうだが。複雑だろう・・・。あの人がどれだけ苦しんだか・・・。」
『知っているさ。僕は全て「視た」もの。』
騒ぐ睦月に、青藍は面倒そうに言う。


「それでもお前は、彼奴と関わる気なのか。」
『そうだよ。君だって解っているはずだ。僕はどうあればいいか。そして、そこには惣右介さんの頭脳が必要なんだよ。』
「あの男が、真実を語るとは限らないぞ?」


『ふふ。あの方は、真実を語るさ。ねぇ、惣右介さん?』
青藍は振り向かずに立ち止まって問う。
暗に、真実を語らなければ退屈は紛れないと言っているのだ。


「・・・面白い男だ、朽木青藍。真実を語ると約束しよう。」
藍染はおかしそうに言う。
『ほらね?だから、大丈夫さ。』
「お前、何した!?あの男が、あんな表情を見せるなんて、有り得ない!」


『そうかなぁ。惣右介さんも、人の子なんじゃないの。』
「お前、それ、俺以外の前で言うなよ・・・。」
『あはは!当たり前じゃない。睦月だから言ったんだよ。』
「お前な・・・。」


そんなことを言いながら再び歩を進め始めた二人に、藍染は、小さく笑みを零す。
その後、藍染は数年に一度訪ねてくる青藍に、情のない意見を語っているらしい。



2017.02.18
青藍と藍染さんの密会。
滅却師編に辿り着かない本作では、藍染さんはすごく暇だろうとの独断と偏見から生まれました。
白哉さんたちが知ったら何とも言えない顔をすることでしょう。
藍染さんと咲夜さんは両極端に居るようで、実は同じところに居る気がします。
二人の決定的な違いは、良い仲間に恵まれたかどうか。
これもまた、藍染さんを悪だと決めつけることが出来ない私の独断と偏見です。


[ prev / next ]
top
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -