色彩
■ 条件反射C

「・・・うんうん。昔の瞳に戻ったねぇ。程よい生意気さだ。そしてこの色気は、咲ちゃんのお蔭だろうねぇ。良い年の重ね方をしているみたいだ。いい子だねぇ、君。」
一色はそう言って白哉の頭に手を伸ばす。
白哉はその手が自らの頭に乗せられる前にするりと避けた。


「あれ?何で逃げるの?」
一色はそんな白哉を不思議そうに見つめる。
「鬱陶しい。」
「あはは。生意気だ。僕が撫でてあげるっていうのに。」


「何故兄に撫でられなければならぬのだ。」
「えぇ?いつも撫でてあげたでしょ?」
「いつの話だ・・・。」
白哉は疲れたように言う。


「うーん・・・。小さかったころ。可愛かった。生意気で。いつも夜一さんに遊ばれてからかわれて逃げられて、それから咲ちゃんに溺愛されて。咲ちゃんと君がお昼寝している姿なんて、何回絵に描いたことか。」
楽しげに言う一色に、白哉は動きを止める。


「・・・絵に描いた?」
「うん。綺麗だったから、描いちゃった。よく咲ちゃんに抱きしめられていたよねぇ。それで膝ま・・・む?」
白哉は思わず一色の口を手で塞ぐ。


「・・・黙れ。」
その姿を見て、咲夜は笑いをかみ殺す。
「咲夜。知っていたな・・・?」
白哉はそんな咲夜を睨みつける。


「あはは。まぁ、私は起きることもあったからな。」
「何故、私を起こさぬ・・・。」
「白哉が可愛いのは事実だからな。可愛すぎて起こすのが忍びなかった。」
「そういうことを聞いているのではない・・・。」
白哉はそう言ってため息を吐く。


「・・・む・・・ふは。何で突然塞ぐかなぁ。死んだらどうするの。」
白哉の手から逃れて、一色は叱るように言う。
「兄がそれほど簡単に死ぬものか。」
「咲ちゃん、白哉君が苛める。」
白哉に睨まれて、一色は拗ねたように咲夜を見る。


「あはは。すまんな。だが、昔からそういう奴だろう。」
「それはそうだけど、僕、白哉君に何かした?」
一色はそう言って唇を尖らせた。


「いや・・・まぁ、していないわけではないが、言っても伝わらないと思うから、何もしていないということにしておこう。な、白哉?」
「・・・はぁ。そうだな。言ったところで伝わるとも思えぬ。」
盛大な溜め息を吐いて、白哉は諦め顔で言う。
「あはは・・・。父上が振り回されている・・・。」
『そうだね。流石一色殿だよ・・・。』


「えーと、それで、紫庵は何処に居るんだっけ?」
再び問われて、青藍は苦笑する。
『橙晴、一色殿を紫庵の元へ案内して差し上げなさい。』
「そうですね・・・。このままだと一生辿り着くことが出来なさそうなので、紫庵に預けてきます。では、行きましょうか、一色さん。」
橙晴はそう言うと一色を連れて出て行った。


『・・・あの方、あの感じですけど、鋭いですよねぇ。』
その背を見送って、青藍はポツリと呟く。
「はは。そうだな。青藍の瞳を見ただけで、傷付いている、だなんて。」
『僕、そう見えます・・・?』
青藍は恐る恐ると言った様子で問う。


「「見える。」」
声を揃えて言われて、青藍は落ち込む。
『格好悪いですね、僕・・・。』
「そんなことはない。しばらくすれば、自然に癒えよう。私も、そうだった。」
咲夜はそう言って青藍の頭を撫でる。


「やはり、今日はここに来させて正解だったな。」
「そのようだ。邸に一人置いておくよりはましだろう。」
『だから今日から仕事に行け、だなんて言ったんですか・・・。』
「あぁ。今日は皆仕事だからな。」


『何ですか、それ・・・。父上、狡いです・・・。』
頷かれて青藍は唇を尖らせた。
「帰ってきたことを体に覚えさせることだ。なるべく、誰かのそばに居ろ。」
「そうだな。たぶん、それが一番いい薬だ。」
『はい・・・。』
青藍な情けない表情になる。


「そんな顔をするな。悪意を持って、命を狙われたのだ。傷つかないはずがない。それでいいのだ。格好悪いことなどないぞ、青藍。」
「そうだな。焦らずともよい。解ったな?」
『はい。ありがとうございます。』
良くも悪くも経験豊富な両親の言葉に、青藍は大人しく従うのだった。



2017.02.16
帰還後初めて六番隊の執務室に顔を出した青藍。
隊士たちが騒がないのは、白哉さんと橙晴が騒ぐなと隊士たちに言いつけていたからです。
本編で名前だけだった一色を漸く出すことが出来ました。
イメージ的には京楽さんを若くして細身にし、髭を無くした感じです。
白哉さんは一色のことが苦手そうですね。


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