色彩
■ 条件反射A

『「何だっけ?」』
考えるのを早々に諦めたのか、二人は声を揃えて橙晴を見る。
「・・・忘れているのなら、その方がいいでしょう。特に、兄様は。」
『え・・・?僕、何かした・・・?』


「・・・はぁ。」
兄様があの日のことを全く気にしていない様子だからおかしいと思ったんだ・・・。
自分の失態を思い出して恥ずかしさに耐える兄様を観察する予定だったのに・・・。
橙晴は盛大に溜め息を吐く。


『ねぇ!?僕、何したの!?ねぇ、橙晴!!』
そんな橙晴の様子から、青藍は不安げに橙晴に問う。
「何でもありませんよ。ちょっと、父上に甘やかされて、睦月に甘やかされただけです。」
『何それ!?』


「白哉・・・。確か、白哉に抱き着いたな・・・?青藍も一緒だった気がするぞ・・・?」
咲夜はうろ覚えなのか、自信なさげに言う。
「えぇ。そうです。お二人で父上にべったりでした。」


『え、僕も・・・?』
「そうです。母上はいつものことですが、兄様までとは・・・。」
橙晴は呆れたように言った。


「いや、何時ものことではないぞ・・・?」
「いつものことです。父上は兄様を僕に押し付けて母上を回収していかれました。酷いですよね。」
橙晴は不満げに言う。


「そうなのか?」
「えぇ。兄様は兄様で僕の背中に張り付いて橙晴は僕のこと嫌いなんだ、とか言って拗ねていたんですからね?」
『・・・いや、それは・・・ごめん?』
全く記憶にないのか、青藍は気まずげに謝る。


「別にいいですよ。睦月に押し付けてやりましたから。」
『睦月・・・?』
「それで、駄々をこねて、乱菊さんと七緒さんと雪乃と深冬とルキア姉さまを泣かせました。」


『!?』
青藍はその言葉に動きを止める。
『駄々をこねて、泣かせた・・・?』
「えぇ。」
頷かれて、青藍は必死で記憶の糸を手繰る。
しかし、何も思い出せなかった。


『何したの、僕・・・。』
「兄様ったら、本当に馬鹿なんですから。」
呆れたように言われて、青藍は泣きそうになる。
『何したの!?』
青藍は橙晴に詰め寄るが、橙晴は呆れた表情で青藍を見上げるだけだ。


「それは・・・まぁ、後で深冬にでも聞いてください。今この場で言うと、流石に兄様が可哀そうなので。朽木家当主の威厳も落ちますし。それでなくとも兄様の女性嫌いが公になって各方面から要らぬ心配をされていますしね。」
橙晴は再びため息を吐く。


『あはは・・・。それは知っているけどさ・・・。本当に何したのさ、僕・・・。そんなに酷いことした・・・?』
「まぁ、ある意味では、通常運転の兄様でしたので、ご安心を。「次」があれば、女性死神協会と草薙の一族が四十六室を潰すとのことです。良かったですね、兄様。」


「青藍、知らないうちに何か凄いことになっているようだな・・・。」
『そのようですね・・・。僕は一体、何を・・・。』
青藍は頭を抱える勢いである。
「まぁ、心強い味方がいるということで、いいのではないか・・・。」
『それは、まぁ、確かに、そうですが。』


「あと、深冬とルキア姉さまと雪乃もそれに協力するそうなので、兄様、敵なしですね。」
橙晴は言いながら遠い目をする。
『待って。深冬も?』


「ま、深冬はあれで、結構怒っているということです。彼らを許さないとか。それから、早めに漣家に行った方がいいと思います。あの方がお待ちです。あの方もお怒りなので、兄様、怒りを鎮めてきてくださいね。」
「大役だな、青藍・・・。」


『え、母上も一緒に行きましょう?僕、嫌ですよ。怖いの。』
「ははは。私だって嫌だぞ。」
咲夜は乾いた笑い声を出す。
『あの方、怒っているんですか?』
「あー、まぁ、そうだな・・・。」


『どのくらい・・・?』
「割と、本気で・・・。」
咲夜は遠い目をしながら答える。


『どうしたら、いいでしょうね・・・?』
「青藍が好きにいじられればいいのだ。」
『・・・まぁ、頑張りましょう。心配をかけたのも事実ですからね。』
「えぇ。よろしくお願いします。」



2017.02.16
Bに続きます。


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