色彩
■ 38.夢じゃない朝

「・・・絶対嫌だ!!!!何だよそれは!?阿呆か!!何の嫌がらせだ!!??」
理解した師走は頭を抱える。
「よかったな。お前の子どもは化け物確定だ。」
「まじかよ・・・。」


「先に言っておくが、俺は面倒見ないからな。」
「うわ、最低!逃げんな!」
師走は噛みつくように言う。
「俺は既に手一杯なんだよ。朽木家は皆して手が掛かるんだから。」
そんな師走に、睦月はため息を吐きながら言った。


「確かにそうだけど!!」
「いや、師走。頷かないでよ。」
「手が掛かるのは兄様だけよ。」


「お前らも大概自覚が足りないよな。まぁ、いい加減諦めているが。・・・そんで師走。弥生と婆様が部屋で呑んでいる。行ってこい。」
「何故命令・・・。」
「今回の礼に酒を運んでいけ。一番いい酒を持って行っていいとさ。」


「誰が?」
師走は首を傾げる。
「そりゃあ、ご当主だろ。」
「え?あいつ、さっき寝なかったか?」


「酔う前に後で持って行けといわれた。持っていくのは師走でもいいよ、だとさ。だから、行け。」
「・・・はぁ。はいはい。行きます。行けばいいんでしょ。行きますよ。」
師走はそう言って立ち上がる。


「爺さんの伝言、弥生にも伝えておけよ。」
「えぇ・・・。爺さんが子どもだって?」
師走は嫌そうに言う。
「それはあまりにも弥生が可哀そうだから、その前のやつだけでいい。」
「可哀そうとか言い切るなよ・・・。」


「五月蝿い。早く行け。・・・命令してやろうか?」
楽しげに言った睦月に、師走は顔を引き攣らせる。
「いや、いい。すぐに行く。」
師走はそう言うと逃げるように姿を消したのだった。


翌朝。
何者かの気配がして、青藍は目を覚ます。
反射的に相手の腕を掴んで引き、相手を抑えつけるように自分が上になった。
「な、なんだ、青藍・・・?」
目の前に居るのが、深冬だと気が付いて、青藍はポカンとする。


『深冬・・・?』
そう言って首を傾げて、目をぱちくりとさせた。
「おはよう、青藍。」
そんな青藍に首を傾げながらも、深冬は青藍に挨拶をする。


『おはよう・・・。』
呟くようにそう返した青藍は、深冬の腕を掴んでいる手を緩めた。
深冬の手にも、己の手にも、指輪が光っていることに気付いたからだ。


『・・・ごめん。僕は、帰って来たんだった。』
青藍はそう言って力が抜けたようにそのまま深冬に覆いかぶさる。
「わ、青藍?重いぞ?」
『おはよう、深冬。』
そう言って抱き締めてきた青藍を、深冬は抱きしめ返す。


「大丈夫だ、青藍。青藍は、ちゃんと帰ってきたのだ。・・・わ!?」
抱き締めたまま寝返りを打たれて、今度は深冬が青藍の体の上に乗る。
「何なのだ・・・。」
深冬はそう言って顔を上げた。


『ふふ。深冬だ。』
そんな深冬を見て、青藍は嬉しげに微笑む。
そして彼女の頬に手を伸ばした。
「青藍?」


『夢じゃ、ないんだね・・・。』
確かめるように深冬の頬に手を滑らせて、青藍は泣きそうに呟いた。
「夢ではない。現実だ。まだ、寝ぼけているのか?」
そんな青藍に、深冬は小さく笑う。


『うん・・・。』
小さく頷いた青藍の瞳から涙が零れ落ちて、深冬は目を丸くする。
「何故、泣いているのだ・・・。」
困ったように言った深冬に、青藍は泣きながら笑う。


『嬉しくて。朝から、君の顔を見ることが出来るなんて・・・。この三年、何度、それを、願ったことか・・・。会いたかった・・・。ずっと、君に、会いたくて、何度も、君を夢に見て・・・。でも、もう、夢じゃないんだ・・・。』
そう言って微笑んだ青藍に、深冬は笑みを返す。


「あぁ。夢じゃない。私と青藍は、一緒に居る。」
『うん。』
青藍はそう言って涙を隠すように目元を手で覆った。
深冬はその手をどかして、青藍を見降ろす。
どこか嬉しげに微笑んでから、青藍の涙を吸い取るようにその目元に唇を寄せた。
一度口付けて、額にも唇を落とす。


『ふふ。くすぐったい。』
青藍はそう言って身を捩る。
深冬は青藍の顔に一通り口付けを落としてから、こつんと額をぶつけた。


「解ったか?」
『うん。解った。』
青藍は頷くと、少し顎を上げて、深冬の唇に口付ける。
それから嬉しそうに笑った。
そんな青藍に深冬も嬉しくなって、今度は深冬から口付ける。


『ん。もっと。』
強請るように言われて、深冬がもう一度口付けると、青藍の手が後頭部に回されて、唇を舐められた。
驚いた深冬は思わず口を開ける。
するり、と、舌が入り込んできて、ゆっくりと舌を絡められる。


「ん・・・。」
その久しぶりの感覚に、背中がぞくりと震えた。
ゆったりと、味わうような口付け。
じっくりと口内を蹂躙され、息が続かなくなる。
「んあ・・・。」
それに気が付いたのか、ちゅ、と音を立てて、唇を離された。


『はぁ・・・。ん。』
一息ついて、どちらのものとも解らなくなっている唾液を、青藍は躊躇いなく舐めとる。
唾液で艶やかに光るその唇は、清々しい朝には似合わない艶めかしさだ。
瞳の奥に熱が籠っていることを見て取って、深冬は小さく震える。


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