色彩
■ 35.酔っ払いの本音

『・・・さみし、かった。』
「そうか。」
『こわ、かった。ひとり、だった、から。』
「あぁ。」


『だれも、居なくて。毎日、戦って、ころされ、そうに、なって。眠るのも、こわかった、けど、ねむらないと、だめで。ねている、あいだに、死んだら、どうしようって。みんなに、会えなくなったら、どうしようって。みんなに、あいた、かった・・・。』
嗚咽を漏らす青藍の背中を、睦月は撫で続ける。


『ごはん、たべたら、どく、はいって、るし。なのに、睦月、いないし。』
「それは悪かったな。」
『調子が、悪くても、だれも、きづいてくれなくて、でも、それをみせる、わけには、いかなくて。だけど、かえり、たかった、から、ひとりで、耐えるしか、なかった・・・。』


「そうか。頑張ったのか。」
『うん・・・。でも、もう、ひとりは、いやだ。もう、いきたくない。』
青藍はそう言って縋り付く。
「行かせない。お前はもう、行かなくていい。」


『ほんと?』
「本当に決まってんだろ。二度もあんなところに行かせるか。次行けって言われたら今度こそ潰してやる。」
『うん。』


「だから、お前はもう行くな。解ったか?」
『うん。』
「よし。・・・眠いなら、寝ろ。蓮の予想通り、昨日寝てないんだろ。」
『ん・・・。おやすみ、むつき・・・。』


「・・・寝たか。で、何でお前らまで泣いてんだよ。」
青藍が眠ったことを確認して、睦月は呆れたように言う。
女性陣は皆、涙を流しているのだった。


「だって、予想していた以上に、きついじゃない・・・」
「それなのに、笑っているなんて・・・。」
「ほんと、馬鹿な子ね、青藍。もう我慢することなんて、ないのよ。」
乱菊は言いながら青藍の頭を撫でる。


「この三年、一番ひとりだったのは、青藍、なのだな。」
「青藍は、ずっと、一人で、耐えたのだな。生きて、戻るために。私たちの、ために。自分の命を狙う者と寝食を共にするなど、どれ程心を痛めつけられたのか・・・。」


「・・・次、こんなことがあったら、あたしが彼奴ら引っ叩いてやるんだから。」
「そうですね。今度は私たちで躾なおしてやりましょう。」
乱菊と七緒は覚悟を決めたように呟く。
「女性死神協会全員で、ですか?」
そんな二人に、雪乃は泣き笑いの表情で問う。


「当たり前じゃない。彼奴らに好き勝手させてたまるものですか。うちの隊長だって、彼奴らには苦しめられたんだから!」
「京楽隊長だって、咲夜さんの件でずっと、胸に重石を抱えているんです。私たちが本気を出せば、四十六室だって怖くなどありません。」


「私も協力します。今回、橙晴だって苦しんだんだから!」
「私も。白哉兄様や咲夜姉さままで苦しめたのだ!浮竹隊長だって苦しんだのだ!」
「私は、青藍を苦しめた彼らを許しません。」


「あんたら怒らせたら、怖そうだ。」
師走はそれを見て楽しげに笑う。
「実際、怖いだろ。此奴らのほかに卯ノ花さんと涅副隊長が居るんだぞ。」
「・・・それは本当に怖いな。」
睦月に言われて、師走は笑みを引っ込める。


「だよな。まぁ、俺たちもそろそろ本気出すけどな。」
「そうだな。もう遠慮する必要ないだろ。」
「今回は青藍の言うことも一理あったから送り出したが。」


「草薙の一族でも集めますか、頭領?」
「それも考え中だ。まぁ、その時は、お前が婆様捕まえて来いよ。」
「えぇ・・・。また・・・。あの婆さん、無駄に素早いんだぞ・・・。」
師走はげんなりしたように言う。


「俺が本気で命令すれば、お前は逆らえないが?」
睦月はそう言って師走をチラリと見た。
「いや、それは、その前に、自分から行くわ・・・。」
そんな睦月の言葉に、師走は顔を青褪めさせながらそう言った。


「だろうな。・・・深冬。此奴の夢、大丈夫か?」
言われて深冬は青藍をじっと見つめる。
「・・・あぁ。悪夢ではない。眠りも深いようだ。」


「そうか。ならいい。じゃ、俺はこれを布団にしまってくる。深冬も来い。そばに居てやれ。目が覚めたとき、一人にしない方がいい。帰ってきたことを、ちゃんと理解してもらわないと困る。お前が、それを解らせてやれ。」
「あぁ。そうだな。」


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