色彩
■ 33.生きにくそうな男

「それで、青藍君に隙がない、というのは?」
「・・・最近の青藍は、人前では、ほとんど眠りません。昔はそうでもなかったらしいのですが。」
「でも、よく十番隊の隊主室で昼寝してるわよ?」
「寝顔の写真を撮ることに成功したことは?」
深冬に問われて、乱菊と七緒は目を丸くする。


「それは・・・。」
「ありませんね・・・。」
「いや、何故深冬はそれを知っているのだ・・・?」
「確かに。」
ルキアと雪乃は不思議そうに深冬を見る。


「青藍は、半分起きているからです。」
「「「「半分起きている?」」」」
四人は首を傾げた。


「はい。完全には眠っていないのです。周りに起きている人が居ると、そうなるらしいのですが。それで、寝顔を撮られそうになったことを青藍から聞きました。」
「へぇ。変な癖ねぇ。」


「私も、青藍の寝顔を見るのは稀です。基本的に私より後に寝て、私より先に起きます。白哉様や咲夜様、ルキアさん、橙晴、茶羅、睦月の前でも。睡眠時間が人より短いことも原因のひとつでしょう。」
深冬は困ったように言う。


「人一倍警戒心が強くて、人一倍弱くて、人一倍繊細な奴なのです。」
「なんだか、生きにくそうですね、それ。」
「そうね・・・。」
「だから、たまに、私が眠らせたり、睦月や師走が眠らせたりするのです。」


「そうだな。」
「あ、お邪魔します。」
「「「「!?」」」」
突然現れた睦月と師走に、深冬以外の者は目を丸くする。


「いやぁ、働いた。」
「そうだな。朽木家の離れは今、刺客だらけだからな。」
「・・・それは大変だな。」
睦月の言葉にルキアは苦笑する。


「あれ、は、いいのか?」
深冬は青藍を見ながら問う。
「放って置いてもいいだろう。たまには白哉さんも困ればいい。」
「そうそう。近くに行くと捕まりそうだから逃げてきた。」


「あんたたちも大概アレよねぇ。」
「いや、だって、あそこに行って、咲夜さんに抱き着かれたりした日には・・・なぁ?」
「あぁ・・・。死ぬぞ。」
睦月はげんなりとしながら言う。


「ははは・・・。睦月は被害者だったな・・・。」
「酷い目に遭った・・・。」
ルキアと睦月は遠い目をする。
「何があったのよ・・・。」


「まぁ、予想通りのことが起こったんだろ。」
「そうだろうな・・・。」
「朽木隊長も大概ですね・・・。」
深冬と七緒はそう言って苦笑を零す。


『橙晴だー!』
「うわ!?ちょっと、兄様!?やめてください!父上!!僕に兄様押し付けましたね!?」
そんな声が聞こえてきて、深冬たちは声のする方を向く。
橙晴の背中に青藍がべったりと張り付いていた。


「父上!どうにかしてください!・・・ちょっと?!無視ですか!?酷いです!!あ!!逃げないでください!!父上!!」
橙晴の叫びも空しく、白哉は素知らぬ顔で咲夜を抱き上げ、邸の中へと入って行く。


『橙晴!大きくなった?』
「なりましたよ!」
『そうなの?頑張ったねぇ。いい子。』
「やめてくださいってば!頭を撫でないでください!」


『なんでぇ?』
泣きそうな声で言われて、橙晴は言葉に詰まる。
「そ、れは、ですね・・・。」
『嫌なの、橙晴・・・。』
「いや、嫌、ですけど、嫌では、なくて、ですね・・・。」


『橙晴、僕のこと嫌いなんだ・・・。』
青藍はさらに泣きそうな声になる。
「嫌いではないです。」
橙晴は、仕方なくそう言った。


『じゃあ好き?』
「何故兄様に好きとか言わなきゃならないんですか・・・。一体何の公開羞恥プレイですか、これは・・・。」
『何でー?僕は橙晴のこと大好きだよ!』
青藍は楽しげに言う。


「知りませんよ・・・。」
『僕は大好きなのに、橙晴は僕のこと嫌いなんだ・・・。』
青藍はそう言って橙晴に体重をかける。


「ちょっと!?人の背中で拗ねないでください!!重いです!春水さんも十四郎さんも笑っていないで助けてください!!」
橙晴に言われても浮竹と京楽は楽しげに笑うだけである。


「・・・大変だな、橙晴。」
「大変ですね。」
「そうね。」
「青藍君、橙晴君のことも大好きなんですね。」
「橙晴も青藍には甘いのねぇ。・・・あら、何かこっち見たわよ、橙晴。」


「・・・兄様。」
『んー?』
「睦月が居ますよ。」
『むつき?』
青藍はそう言って首を傾げる。


「えぇ。兄様のことが大好きな睦月です。」
言われて睦月は逃げ出そうとするも、橙晴に睨まれた師走が睦月を捕まえる。
『そうなの?』


「そうです。睦月は兄様が大好きです。ほら、あそこに居るでしょう?行ってあげてください。」
橙晴は言いながら睦月を指差した。


『本当だー!行く!』
青藍はそう言って橙晴から離れると、ふらふらと睦月の方へ歩き出す。
彼の視界に入らないように、深冬たちはそろそろと動いて青藍に道を開けた。
それを見た橙晴は浮竹と京楽の元に行って彼らと共に呑み始める。


[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -