色彩
■ 29.これからの話

『ですが、もう、覚悟を決めます。私は、ここに帰ってきた。そして、もう二度と何処にも行かない。でもきっと、私では足りないことがたくさんある。だから、足りない部分を補って貰えますか。私を見守って、父や母では足りなかった部分を埋めてくださったように。』


「・・・うん。いいよ。十五夜様も言っていたじゃない。君はもっと自分自身が幸せになることを自覚しないと、って。だから、いいよ。僕らが必要なら、いくらでも、見守るよ。」
「俺は、元からそのつもりだ。見守るなと言われても、もう、お前らから目を離すことは出来ないさ。それだけ、お前らを見て来たんだからな。」


『春水殿・・・。十四郎殿・・・。』
泣きそうに呟いた青藍に、京楽と浮竹は穏やかに微笑む。
「だからね、青藍。望んでいいんだよ。深冬ちゃんだって、それを望んでいるはずだ。」
「もちろん、俺たちだって。俺たちは、お前に幸せであって欲しい。欲しいものは掴み取れ、青藍。深冬に手を伸ばしたように、欲しいものに手を伸ばせ。お前の我が儘になら、いくらでも付き合ってやる。俺も京楽も、それが出来るくらいには、余裕がある。」


「むしろあり過ぎて困っちゃうくらいだよねぇ。二人とも男鰥夫ってどういうことよ?」
「ははは・・・。悲しいな、京楽・・・。」
「本当だよね・・・。」


『・・・ふふ。』
哀愁を漂わせる二人に、青藍は思わず笑みを零す。
「あ、何笑っているの、青藍。」


『いえ。お二人は、お二人のままだなぁ、と。僕もそのくらい大きくなりたいものです。』
「なれるさ。お前なら。」
「そうそう。まだまだ、負けてはあげないけどね。」


『望むところです。高い山ほど、上り甲斐があるものですから。』
「あーあ。青藍に追われるなんて、気が抜けないねぇ。」
「全力で逃げないとなぁ。」
二人はしみじみと言ってから、くすくすと笑いだす。
それにつられて、青藍も笑い声を漏らした。


『ふふ。・・・さて、それじゃ、覚悟を示しましょうかね。今ここに居る皆に、証人になって貰いましょう。』
青藍は楽しげに言って、立ち上がる。


『深冬!』
突然大きな声で名前を呼ばれて、深冬は反射的にその声の方を向く。
見えたのは、どことなく楽しげな青藍の顔。
こちらへ来い、と手招きをされて立ち上がれば、多くの視線が集まっていることが解る。
どうやら彼は大きな声を出してわざと皆の視線を集めたらしい。


一体何をする気だ・・・?
疑問に思いながらも、深冬は立ち上がって青藍の元へと向かう。
ちらりと彼の後方を見れば、そこには青藍と同じように楽しげな浮竹と京楽の姿。
それを見て、深冬はさらに首を傾げた。


「青藍?どうしたのだ・・・?凄く注目されているぞ・・・?」
『あはは。そうだね。でも、僕たちの話を、皆にも、聞いて欲しいから。』
「話・・・?」
目を瞬かせた深冬に、青藍は微笑む。


『うん。今ここで、僕と君のこれからの話をしよう、深冬。』
「私と、青藍の、これから・・・?」
『僕は朽木家当主で、六番隊第三席だ。おまけに愛し子という厄介な立場まである。君は、そんな僕の妻だ。』
青藍の言葉に、深冬は頷きを返す。


『この先も僕の妻で居るのならば、君は、これまでと同じように、大変な目に遭うだろう。悲しみも苦しみも、痛みも味わうだろう。正直、もう君にそんな思いはさせたくないけれど、僕は君がそばに居ることしか考えられないから、君の苦しみを受け止める覚悟は決めた。君も、その覚悟をしてくれるだろうか。』


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